松江市の秋の風物詩・鼕(どう)行列が16日、3年ぶりに開かれる。マスク着用や観客への感染対策の要請といった入念な新型コロナウイルス対策の下、14町内・団体の約千人が参加し、国宝・松江城(松江市殿町)から白潟天満宮(同市天神町)までのルートを巡る。後継者不足などの課題を抱えるが、参加者は「試練を乗り越え、伝統をつなぐ」と意気込む。 (井上雅子)
100年以上の歴史がある鼕行列は、鼕と呼ばれる大型の太鼓を打ち鳴らしながら松江城周辺を練り歩く行事。新型コロナの感染拡大の影響で、2020年から2年連続で中止を余儀なくされた。
行事を運営する松江市鼕行列保存会(長崎敏明会長)は、伝統行事を継承するため「今年こそは」と開催を前提に準備。来年以降の行事の継続性も念頭に、餅まきや振る舞い酒の式典を中止し、参加者には体調のチェックとマスクと笛用シールドを義務付けるなど、できる限りのコロナ対策を講じる。
松江城下の13町内・1団体が参加を予定。例年に比べて規模は小さいものの、長崎会長(75)は「伝統行事は続けないと衰退し忘れられてしまう。コロナ禍でも、これだけ参加してくれることがありがたい」とかみしめる。
松江市街地の町内会単位で構成する鼕行列には、引き手や太鼓、笛で1町内会当たり100人程度の規模が必要だが、近年は少子化や市街地から郊外に人口が流出する「ドーナツ化現象」で、後継者不足が課題となっている。
4年ぶりに参加する東茶町鼕保存会(桑原正樹会長)は、町内会に属さない人の手を借りながら定期的な参加を続けてきた。19年には多方面の支援を得て新しい鼕庫が完成。桑原会長(37)は、周囲への感謝と伝統をつなぐ重みを胸に「本番は観客も参加者もどちらも楽しめる鼕を披露したい」と力を込める。
15日は松江城とJR松江駅北口で前夜祭があり、鼕行列は16日午後1時半から松江城周辺などで行われる。