全国旅行支援の開始や鉄道開業150年に合わせたわけではないが、先週末、愛知で学生生活を送る息子を訪ねて鉄道で旅した。コロナ禍のため久々の乗車となった新幹線は、特急「やくも」と違って揺れも少なく快適だ▼座席の網棚にあったビジネス誌を読み進めると「リニアができたら、したいこと」というJR東海の広告が目に留まった。「自然豊かな山梨に家を建てて、週末は温泉三昧!」「長野から東京へ通勤して星がキレイな夜空で毎晩リフレッシュ!」「娘がもし東京の大学に行っても、岐阜から通ってほしいな」…▼東京・品川-大阪間を最速67分で結ぶリニア中央新幹線計画のうち、駅が開設される沿線3県の住民を想定した「したいこと」。ただ、通過点となる静岡県が環境への影響を理由に地元工区の着工を認めていない上、神奈川県内の車両基地の用地取得も滞っており、予定する品川-名古屋間の2027年開業は難しい▼とはいえ、東海道新幹線の代替機能という位置付けからすれば一刻一秒を争う必要もないだろう。二つの基本計画路線を抱えながら周回遅れの山陰から見れば贅(ぜい)沢(たく)な悩みで、「こっちを早く」という声が聞こえてきそうだ▼経済界を中心に誘致への熱は高まっているものの、住民の関心はまだ低い。「新幹線ができたら、○○したい」-。今は現実味が薄くても、夢を語ることが機運を高める一歩となる。(健)