ひょんなことから先日、エフエム山陰の番組に出演した。本紙とデジタル版のSデジで展開する「さんいん洋楽愛好会」の担当者として、洋楽への思いを語ってほしいという想定外の依頼に戸惑いつつ、地元局に感謝を込めて引き受けた▼スタジオでも話したが、これまで多くの素晴らしい音楽に出合わせてもらった。放送でたまたま耳にして魅了された歌は数知れない。曲名を聞き逃し、代表電話に問い合わせたことも一度や二度ではない。インターネットのない30年前の話。そうやって知った作品は今も愛聴盤だ▼スマホ時代の音楽配信は個人の好みを「人工知能」が分析し、趣味に合いそうな歌を届けてくれるうれしいサービス。ただ、ラジオがもたらす「偶然の出合い」は忘れずにいたい。未知のジャンルの入り口になったりする▼新聞も売りの一つは偶然性。たまたま開いた紙面に載っている記事から、あるいは目当ての記事の隣にたまたまある記事から、世界が開けることがある。漫才コンビ錦鯉の長谷川雅紀さんも、愛読する小学生新聞に「予想外の記事」があって面白いと14日の本紙で語っていた▼ネットが普及し、得られる情報は爆発的に増えたのに、自分好みの情報ばかり集め、違う意見や立場を知ろうとしない「視野狭窄(きょうさく)」に陥らぬために新聞はいかが。きょうまでの新聞週間標語の一つは「紙面から 広がる世界 近づく社会」。(輔)