ニューヨークのタイムズスクエアで、黒人差別に抗議する大勢の人たち=2020年6月(ゲッティ=共同)
ニューヨークのタイムズスクエアで、黒人差別に抗議する大勢の人たち=2020年6月(ゲッティ=共同)

 昔ながらの「はだいろ」という言葉が、身の周りから消えつつある。既に色鉛筆やクレヨン、絵の具メーカーは2000年ごろから名称を「うすだいだい」や「ペールオレンジ」に改めている。新聞でも今年春から「肌色」は「差別語」に追加され、「薄だいだい」か「薄いオレンジ」に言い換えるようになった▼新聞表記の基準となる『記者ハンドブック』(第14版)の注釈には<肌の色はそれぞれ。クレヨン、色鉛筆、絵の具などでは使われていない>と。確かに人種や個人で肌の色は異なる。昔と違って特定の色を「はだいろ」とすることには抵抗がある人もいるだろう▼そういえば昨年春、大手コンビニが自社ブランドとして販売を始めた女性用下着の色の表記「はだいろ」に対し社内外から不適切との指摘があり、自主回収したことがあった▼多様性への配慮では同じ昨年春、国内の大手化粧品会社が「美白」の表記を順次、取りやめると発表した。米国で起きた黒人差別への抗議運動を受け、欧米のメーカーが「肌の色による優劣を連想させる」として「ホワイトニング」などの表記を相次ぎ取りやめたことに倣ったようだ▼まさかとは思うが、こうした流れになると気になるのは島根県が観光のキーワードにする「美肌」への風向き。身体的特徴を表す言葉は自覚がないまま人を傷つける場合があるが、「言葉狩り」の様相になるのもつらい。(己)