家族で見守っていくことが難しい子どもやお年寄りの安全・安心を地域社会の連携で維持する取り組みが重要になっている▼介護保険制度と同じ2000年4月に始まった「成年後見制度」もその一つだ。認知症や心の病によりお金の管理などができなくなった本人に代わり、家庭裁判所で認められた後見人が財産管理のほか、介護サービスの契約を結んだり、悪徳業者にだまされないよう気を配ったりしてくれる▼裁判所の統計によると、21年に成年後見人の申し立てがあったのは、松江管内204件、鳥取管内240件。少なくないように思えるが、子どもが遠くに住んでいる1人暮らしのお年寄りや、認知症の人の増加などを踏まえると、全国的に利用が伸び悩んでいるとも言える▼増えるニーズに対して、後見人になり得る法律の専門職や研修を受けた市民後見人のなり手が不足しているなど、さまざま要素が背景にある▼当事者でないと実感できない部分もあるが、判断の衰えは誰にでも起こり得る。近年は社会福祉協議会、介護サービス事業者、医療、金融機関などがチームで情報交換して、本人に適宜後見人の申し立てを勧めるネットワークが市町村ごとにできつつある。申し立てを受ける裁判所も、各地で議論に参加するなど、仕組み作りを後押ししている。住み慣れた地域で最後まで人生を全うできるための努力に注目していきたい。(万)