ベンチャー企業スカイドライブの空飛ぶ車「SD―05」のイメージ(同社提供)
ベンチャー企業スカイドライブの空飛ぶ車「SD―05」のイメージ(同社提供)

 果たして実現するだろうか。2025年大阪・関西万博での導入を目指し「空飛ぶ車」の開発を手がけるベンチャー企業が、機体デザインを発表した▼小型で俊敏に飛び回るツバメをイメージした外観で、「エアタクシー」として10キロ圏を最高時速100キロで飛んでいけるというから、漫画で見た未来の世界そのものだ。想像するだけで胸が躍る▼半世紀前、1970年の大阪万博にも耳目を集めた「未来の乗り物」があった。会場内を時速6~8キロでゆっくりと走る電気自動車(EV)である。マイカーブームでガソリン車が当たり前だった時代に、物珍しく映ったに違いない▼開発したのはダイハツ工業。当時社長だった浜田市出身の小石雄治(1894~1984年)が主導したプロジェクトが実り、場内タクシーなどで約270台を納入した。小石は人々の暮らしを豊かにしたいと自動車生産に尽力しながら、車社会が引き起こす大気汚染問題にもいち早く目を向けた。排ガスを出さない環境に優しいEVの開発に先んじ、業界をけん引したという。先見の明と経営の才覚に敬服する▼そんな郷土の偉大な先人の目に、今の社会はどう映るのだろうか。環境問題は深刻化し、EVはと言えば、普及前夜でまだ身近な存在とは言えない。空飛ぶ車が日常的な移動手段に使われるのはいつになることか。想像した未来へ、ひとっ飛びとはいきそうにない。(史)