個性が尊重される時代にあって、個人も尊重されているだろうか。むしろ人びとは分断されてつながりを失い、互いが互いを認める力を手放しつつあるようにも映る。

 ▽ラベリング

 今年の文芸賞は2作同時受賞。そのうちの1作、安堂ホセの「ジャクソンひとり」(「文芸」冬号)は、入れ替わりというギミックを通じて、社会における「個」と「属性」のジレンマを鮮やかに暴き出した作...