新型コロナウイルスの感染拡大第8波の本格到来が指摘される中、島根県内の医療機関でクラスター(感染者集団)の確認が目立ち始めた。職員と患者で複数の感染者を出し、現時点で入院患者の受け入れや診療の一部を中止する医療機関もある。今夏の第7波では職員の欠勤で業務の人繰りが困難となったケースもあるだけに、現場では態勢維持へ不安を抱く。
【グラフ】島根、鳥取両県の感染者数の推移
「(感染者が)増えてきているというのは実感している」。13日に院内でのクラスター発生を公表した安来市立病院(安来市広瀬町広瀬)の植田真矢樹総務部長が危機感を募らせた。同院では11日夜から12日に職員20人を含む計41人の感染を確認。救急対応は継続するものの、当面は新規入院の受け入れやリハビリなどを中止する事態となった。
6日までの1週間で島根県が把握したクラスター35件のうち、医療機関は3件(8・6%)に過ぎなかったが、14日までの1週間では23件中6件(26%)を占めた。さらに、このうち4件は医療資源が限られている県西部に集中した。
済生会江津総合病院(江津市江津町)では14日までに入院患者12人と職員12人が感染し、入院や人間ドック、手術の一部を制限。益田赤十字病院(益田市乙吉町)も同日時点で看護師と医師ら20人の感染が判明した。インフルエンザとの同時流行への懸念も強まり、総合診療科の岡本栄祐部長は「県東部と違い、ただでさえ医療人材が足りない。感染による人員不足で救急医療にも影響が出るかもしれない」と危ぶむ。
こうした中、第7波での教訓を踏まえ、早めの態勢整備に着手した医療機関もある。
松江赤十字病院(松江市母衣町)では7~9月、濃厚接触などで一時最大で全職員の5%に相当する約60人が欠勤する事態となった。入院受け入れの中止のみならず、感染者の少ない病棟から職員の応援を出すなどして負担を分散し、急場をしのいだ。
現在、同院内でのクラスターは確認されていないが、新型コロナ関連の欠勤は徐々に目立っており、今月以降、救急搬送の増加に備えた市内のほかの総合病院との連携確認に着手した。森脇光成事務部長は「最近は感染者数の確認のペースが上がっているように感じる。過去を教訓としてなんとか医療提供を維持したい」と力を込めた。
(取材班)