バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が初の対面会談を行った。米中は貿易摩擦や中国の海洋進出、人権問題など数多くの対立を抱える。両首脳は台湾問題を巡って激しく対立したが、衝突回避へ向けた意思疎通の強化では一致した。
国際社会で大きな影響力を持つ米中二大国は世界と地域の平和と安定に重い責任を負う。粘り強く冷静な対話を重ね、対立から共生への転換を図るべきだ。
バイデン氏は苦戦した中間選挙で巻き返し、任期後半に自信を示す。習氏は共産党大会で権力基盤をより強固にして異例の3期目に入った。両首脳は今会談を新たな出発点として関係改善に真剣に取り組んでほしい。
バイデン氏は「台湾海峡の平和と安定を損なう中国の威圧的で攻撃的な行為」に反対しつつ、米国の「一つの中国」政策に変更はないと強調した。習氏は台湾問題は「中国の核心的利益」、米中関係で「越えてはならない最重要のレッドライン」と強くけん制した。
8月、ペロシ米下院議長の訪台に猛反発した中国は、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施。習氏は党大会の活動報告で「平和統一を目指すが、武力行使の放棄は約束しない」と述べた。
バイデン氏は中国が武力侵攻すれば、台湾を防衛すると何度も発言してきた。米議会は台湾への軍事支援を強める法律制定に動いており、台湾を巡る米中の対立は続きそうだ。
台湾有事に至らないよう外交努力を尽くすことが何より重要だ。中国はペロシ氏訪台後、軍指揮官の対話や海上安全保障のための対話メカニズムなど偶発的な衝突防止を図る米中協議を凍結した。これらは直ちに再開するべきだ。
バイデン氏は会談で、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に自制を促すべきだと述べた。習氏の反応は不明だが、北朝鮮を動かすには、かつて中国が議長国を務めた6カ国協議のように米中など多国間の協調が必要だ。
両首脳がウクライナでの核兵器の使用や威嚇に反対を表明したことは評価できる。9月、習氏はロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナ侵攻への懸念を伝えたもようだ。中国はロシアに強い影響力を持つ。米中は侵攻終結に向けた対ロ圧力で協力するべきだ。
バイデン氏は「米中両国は気候変動など地球規模の課題への対処で重要な役割を果たすべきだ」と述べた。中国側発表によると、双方は気候変動や食料安全保障などの問題で対話・協力を進めることで一致した。
国連のグテレス事務総長は気候変動枠組み条約の締約国会議で米中に「二大経済大国の努力」を求めた。温暖化対策は人類共通の重要課題で、最大の温室効果ガス排出国、中国の協力は不可欠だ。
習氏は党大会で、建国100年を迎える今世紀半ばまでに米国に比肩する近代化された「社会主義強国」をつくる目標を改めて強調。バイデン政権は初の国家安全保障戦略で中国を「唯一の競争相手」と位置付けており、米中の覇権争いは長期化しそうだ。
今会談では競争管理の「原則」について協議した。また、双方は意思疎通を維持し、課題への取り組みを深めるため高官協議を強化し、ブリンケン米国務長官訪中で合意した。米中が前向きな対話を続け、緊張緩和へ向かうよう望みたい。