樹齢200年の築地松に手を掛ける瀬崎勝正さん=出雲市斐川町三分市
樹齢200年の築地松に手を掛ける瀬崎勝正さん=出雲市斐川町三分市
出雲平野特有の景観をつくる築地松=出雲市斐川町三分市
出雲平野特有の景観をつくる築地松=出雲市斐川町三分市
樹齢200年の築地松に手を掛ける瀬崎勝正さん=出雲市斐川町三分市 出雲平野特有の景観をつくる築地松=出雲市斐川町三分市

 出雲平野の代表的景観をつくっている築地松(ついじまつ)の減少が緩やかになっていることが、2020年の行政の調査で明らかになった。松くい虫による松枯れ被害が鎮静化しつつあるのが大きな要因だ。ただ、維持管理費の負担から、所有者が手放す傾向に歯止めはかかっておらず、島根県や出雲市などでつくる築地松景観保全対策推進協議会は、助成制度を拡充するなど所有者の負担軽減を図る考え。 (松本直也)

 調査に当たった推進協によると、前回調査の12年と比較して、築地松の所有戸数が17%、クロマツの本数が5%減少した。市全体で1516戸、1万731本あったのが、20年には1264戸、1万182本に減少。旧市町別では▽斐川804戸、6952本▽平田212戸、1496本▽出雲196戸、1184本▽大社51戸、549本▽湖陵1戸、1本ーとなっている。

 12年の調査では、08~12年ごろの松くい虫による松枯れの流行や、健康へのリスクの観点から、09年に北山地域での薬剤の空中散布を中止したこともあり、1999年調査の3380戸、2万2501本からともに半数以上減っていた。

 近年は薬剤を松に打ち込んで松くい虫を殺す薬剤の樹幹注入などの取り組みで松枯れが抑えられている一方、所有者の維持管理費の負担軽減が新たな課題だ。市によると剪定(せんてい)が1回平均8万円、樹幹注入は同12万3800円かかるという。

 推進協は、剪定費用を最大で半額(上限4万5千円)、樹幹注入費用も最大で半額(同6万円)などを助成しているが、さらなる負担軽減を望む意見は根強くあり、協議会は剪定費用の助成金制度を見直す方向で検討している。

 

息長く保全できる仕組みを 斐川の瀬崎さん訴え

 築地松の松枯れ被害は鎮静化しつつあるものの、将来的な保全、継承に向けた関係者の危機感は年々高まっている。自ら築地松を所有し、観光客らのボランティアガイドも務める瀬崎勝正さん(80)=出雲市斐川町三分市=は維持管理費用の負担軽減に加え、次世代の理解を深めることが必要と説く。

 瀬崎さんの自宅には、高さ10メートルのクロマツ14本が北と西側にL字形に並ぶ。中でも樹齢200年のクロマツの幹の太さは3・5メートルにも及び、重厚感と存在感を漂わせる。「先人が汗と知恵を絞ってつくった。何とか守っていきたい」とクロマツを誇らしげに見上げる。

 ただ先行きは厳しい。推進協のアンケートでは、回答があった築地松所有者640戸の31・6%が「今後維持できない」と回答。核家族化が進み、自分の代では管理できても、跡継ぎが外に住み、将来的な維持に不安を残す現状もより明らかになった。

 先人の思いを知らない若い世代が、木を切ってしまうこともあるという。「新たに植えて一人前になるには100年かかる。手を放せば戻らない」と話す。

 当面は、次世代にも管理できると思ってもらえるような下地づくりが重要だ。瀬崎さんの場合、4年に1回の剪定の陰手刈(のうてご)りに17万円かかる。現状の補助制度では上限額があるため4万5千円にとどまる。

 「所有者が次世代と話し合い、家族で築地松に誇りを持ってもらい、行政と一緒になって息長く保全できる仕組みが必要だ」と訴える。所有世帯の管理意欲を維持するためにも補助の在り方を見直し、さらに減少する陰手刈り職人の養成にもつなげるべきだと指摘する。

       (松本直也)

 

 築地松 江戸末期から明治期、斐伊川の洪水から浸水を防ぐために家の敷地を高くし、土塁を固めるために水に強い樹木を植えたのが始まりとされる。クロマツが成長して防風林の役割を果たし植樹が定着していった。旧斐川、大社、湖陵町や旧平田、出雲市に分布している。