白い紙を掲げて「ゼロコロナ」政策に抗議する人々=北京市内(ゲッティ=共同)
白い紙を掲げて「ゼロコロナ」政策に抗議する人々=北京市内(ゲッティ=共同)

 来年1月15日までの予定で開かれている松江市立鹿島歴史民俗資料館の特別展「魯迅-詩と書簡」で、中国の文学者・魯迅(1881~1936年)が同市鹿島町出身の中国文学研究者・増田渉(1903~77年)に送った手紙が展示されている▼増田と文通していた晩年の魯迅は、強権的な当時の中国政府(国民政府)を痛烈に批判したため、命を狙われている状態だった。1933年6月25日付の手紙には、政府による白色テロ(暴力的な弾圧)が横行し、同志が失踪したり暗殺されたりした状況がつづられていた。「『ホアイト・リスト』の中には私儀も入選の光栄を獲得して居(い)るそうだが」と、ブラック・リストをもじったユーモアと風刺を交えた文面はとても興味深い▼手紙を見て思うのは、現在の中国政府のゼロ・コロナ政策に伴う厳しい都市封鎖に対し、民衆が掲げる「白い紙」。ネット上での体制批判の言論が片っ端から削除される不自由な社会で、「無言の抗議」を示したものだという▼掲げた当人は全く意識していないだろうが、理不尽な都市封鎖という政府の弾圧、いわゆる「白色テロ」の意味も込められているように読める。これが奏功したのか、各地で封鎖が緩和されつつある▼魯迅に代表されるように中国の知識人は、行動や表現の自由が大きく制限されている時にこそ、ユーモアやしたたかさを発揮する。その手法に注目したい。(万)