記者会見する中国電力の瀧本夏彦社長=11月25日、広島市の中電本社
記者会見する中国電力の瀧本夏彦社長=11月25日、広島市の中電本社

 マッチポンプは、マッチで火を付けた張本人がポンプで水を掛けて消すこと。偽善的な自作自演を意味する和製外来語として知られる。事業者向け電力販売を巡る中国電力など大手電力4社によるカルテル疑惑の構図を聞き、この言葉が思い浮かんだ▼今回の張本人は関西電力のようだ。電力自由化が進む中、中部、中国、九州の3電力との間で、オフィスビルや大規模工場向けの「特別高圧電力」などの販売に関し、互いに他社の区域での営業を控え顧客獲得を制限するカルテルを結んだとされる▼ところが、公正取引委員会の調査前に自主的に違反行為を申告した関電には、独禁法の課徴金減免制度に基づき金銭的なおとがめはなし。公取委から総額1千億円超の課徴金納付命令を出す処分案を通知された残り3社からは、関電への恨み節が漏れる▼そのうち中国電はカルテルの合意範囲が広域に及んだため、課徴金額は700億円を超える。ウクライナ危機や歴史的円安による燃料費高騰で業績不振に陥っている中、「泣きっ面に蜂」である▼見方によっては関電に裏切られた被害者のように映るものの、中国電が加害者であることに変わりはない。今回のカルテルは事業者向けながら、給与や商品価格などで消費者に跳ね返ってくる。何より信頼を裏切られた消費者の怒りの火を消すには、「誠意」というポンプがいくつあっても足りそうにない。(健)