出雲横田-備後落合駅間を走行するJR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」=11月18日、島根県奥出雲町八川
出雲横田-備後落合駅間を走行するJR木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」=11月18日、島根県奥出雲町八川

 数年前、JR木次線を走るトロッコ列車「奥出雲おろち号」に乗車した。ガラスのない車窓で深い緑の中を風を受けて走る爽快さ、急斜面を上るために折り返しながら進む「3段式スイッチバック」で、さっきまで走っていた線路を眼下に見る不思議さ…。眺めのいい地点では、景色を楽しんでもらうため超徐行運転になった。こんな鉄道があるのか、と驚いた▼ただ、交通機関としての機能には疑問を感じた。乗ること自体に魅力はあるものの、帰路を考えると一日を費やす。乗車した際は家人に車で並走してもらい、奥出雲おろちループを過ぎた辺りの駅で拾ってもらった▼木次線は定期列車の運行本数が少ない。人口減に直面する地方路線は、需要に合わせて運行本数が削減され、利便性が下がり、さらに利用が減るという負のスパイラルに陥っている▼参院選の「合区」でも同じ構図を感じる。「法の下の平等」が議員1人当たりの有権者数のみで判断され、人口が少ない県同士が一つにまとめられ、さらに地方の声が国政に届きにくくなり、人口減などが加速する-という懸念がある。鳥取・島根合区選挙区の有権者で、都会地の何倍もの権利を行使しているという実感を持つ人がいくらいるというのか▼地方路線を含めた鉄道網もしかり、国の根幹にあるものの価値を単純な構図で捉え過ぎではないか。地方の衰退は国の衰退と無縁ではない。(直)