運休前の最後のフライトで米子空港を飛び立つグレーターベイ機=8月31日、境港市佐斐神町
運休前の最後のフライトで米子空港を飛び立つグレーターベイ機=8月31日、境港市佐斐神町

 「一本足打法」といえば、世界の本塁打王、王貞治さんの代名詞。どっしりとした構えが目に浮かぶが、ビジネス用語では特定の事業などに依存したリスクがある状態を指す。

 香港の新興航空会社グレーターベイ航空の国際定期便・米子-香港便が、今月から運休している。「日本で大災害がある」という「予言」の影響で利用が落ち込んだことが引き金に。2024年10月27日の就航から1年足らずを、数字で改めて振り返ると「一本足」の弱さが見える。

 月々の搭乗率がおおむね50~60%台で推移し伸び悩む中、極端だったのが、香港からのインバウンド(訪日客)と米子からのアウトバウンド(日本人客)の搭乗比率。就航後の実質最初の月だった昨年11月の日本人比率はわずか2・3%。最高の今年3月でも18・5%だった。

 山陰のインバウンド誘致の課題が「情報発信の不足」と言われてきたことを考えると、科学的根拠のない予言が、香港で交流サイト(SNS)を通じて広まったというのは皮肉だ。予想もしない事態で、インバウンドに偏った打法はバランスを崩してしまった。

 鳥取県は当面、「第2の玄関口」として、直行便がある都市から周遊を促す誘致対策を強化。直行便の復活も航空会社と話し合う。今度は足腰の強い路線にしたい。観光だけで限界ならビジネス利用も進め、山陰と世界をつなぐ持続可能な「二本足打法」を編み出したい。(吉)