例題が載った西内啓さんの著書『統計学が最強の学問である』
例題が載った西内啓さんの著書『統計学が最強の学問である』

 「肉を食べる人ほど長生きする」といわれる。そんなデータもあるようだ。確かに、昨年11月に99歳で亡くなった作家の瀬戸内寂聴さんや、プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎さん(90)は肉好きで知られる。ただ肉を食べることで寿命が延びるのか、長生きするような元気な人ほど肉を食べるのかははっきりしないらしい▼データの解釈は難しい。数字に強くない「文系人間」は、結果と原因を安直に結び付けやすい。何でも鵜呑(うの)みにしないようにしないと、世間には似たような情報があふれている▼統計の専門家・西内啓(ひろむ)さんの著書で、こんな例題を見つけた。A、B二つの高校の同学年に同じ試験をしたら(1)男子の平均はA校が5点高かった(2)女子の平均もA校が5点高かった。全体の平均点はどちらが高いか-という問いだ▼A校と思いやすいが、そうなるとは限らない。英国の統計学者が見つけた「シンプソンのパラドックス」と呼ばれる現象で<全集団同士での単純比較は、その内訳となる小集団同士との比較の結果と矛盾することもある>と▼例えば、A校の男子は160人で平均点は60点。女子は40人で平均点75点。B校は男子が40人で平均点55点。女子は160人で平均点は70点で計算してみてほしい。全体の平均点はA校が63点、B校が67点になる。両校どちらが優れているかという主張は、データをどう切り取るかで違ってくる。(己)