断熱材が入り、空調が効いたアパート住まいで使うことがなくなったが、戸建てに住んでいた子どもの頃は冬場、寝るときにあんかを手放せなかった。昔はお湯や炭火が熱源だったが、昭和の終わりごろは電気あんかが主流だった▼漢字で書くと「行火」となる。「行」を「あん」と読むのは唐音の名残で、広辞苑によると持ち運ぶことを意味する。他には電気が通っていない時代に部屋の明かりをともすのに使われた「行灯(あんどん)」や、各地を訪ね歩く「行脚(あんぎゃ)」がある▼何をするにも手間暇をかけ、物を大事にする精神性が表れており、好きな漢字、読み方の一つだ。同じ「行」でも「行水」の場合の読み方は「ぎょう」となり、モノや習慣が日本に入ってきた時代によって変わる▼きょうはクリスマス。日曜でだんらんする家族も多いだろう。日本では、コロナ禍や物価高などで経済が冷え込んでいるものの、平和で穏やかな幸せがそこにある▼ロシアの侵攻を受けているウクライナには、クリスマスを祝う日がグレゴリオ暦の12月25日と、これまでのロシア正教との関係からユリウス暦による1月7日の二つがある。ウクライナの正教会には、ロシアの正教会との関係断絶を宣言する動きもあり、戦時下の電力不足で迎えるクリスマスの風景は様変わりしそうだ。行火でも行灯でもいい。温かく明るい所で聖なる一日を過ごしてほしいと祈りをささげる。(万)