2022年4月、山陰中央新報社に入社した新人記者が何を思い、感じたのか。<下>では松江本社編集局報道部の山本貴子と雲南支局の山本泰平の2人がこの1年を振り返った。

衝撃の出来事、不覚にも涙腺が… 新聞記者になって~本社新人記者、2022年を振り返る<上>(Sデジオリジナル記事)

ドキドキの取材初日 由志園の「神対応」に救われる
(編集局報道部・山本貴子)


 4月21日、松江市八束町波入の由志園の取材が一番印象に残っている。由志園では、庭園の池にボタンを敷き詰める「池泉牡丹」というイベントをゴールデンウイークに向けての人気行事として開催する。前もって地元の農家からボタンを引き取り、イベントまで保管する作業を取材した。

▼少しずつ学ぶ
 配属された初日、一人で取材に行った。まだ車がなかったので、公共交通機関のバスを利用し、無事にたどり着けるだろうかと、ドキドキしながら取材先に向かった。

 あいさつや取材のやり方など拙いところばかりだったと思うが、とても丁寧に一つ一つ答えていただいた。写真撮影でも、いろいろな角度や構図を協力してもらい、ありがたかった。とても貴重な経験だった。

配属初日に取材し、撮影した写真


 仕事をする中で、一度にいろいろなことを片付けていくことが苦手だ。相手に質問しながら、その返答をメモし、疑問点を深掘りして、さらに複数の確認をするという、取材の基本的なところでつまずいた。

 また、聞いた事を素直に受け入れてしまう性格なので、取材する時にどういう点に疑問を抱き、質問しておけばいいのか分からず、聞き漏らしや確認が足りないこともあった。デスクのアドバイスや日々の取材の中で少しずつ取材のノウハウを学んでいった。

▼人の温かさ感じる
 時には街行く人のコメントを取りに行くこともあった。見ず知らずの人に話しかけ、世の中のニュースや政治に対する意見を聞いた。私は消極的な性格だったので、全く知らない人に話しかけなくてはならず、不安でたまらなかった。

 相手にも迷惑だろうとも思っていた。だが、地元の人たちは足を止めて、質問に答えてくれた。人の温かさを感じた。また、取材で初対面の人と会う時も、笑顔で丁寧に対応してくれる人が多く、世の中は厳しいだけではないのだと実感した。
 

レザークラフト職人の曽田耕吉さんの展示会。優しく丁寧に対応してもらい、人の温かさに触れた=4月27日 松江市殿町、島根県物産観光館


 入社して9カ月が経過した。慣れたこともあれば、慣れないこともあり、目の前の仕事に追われる日々だが、記者の仕事は楽しいと感じるようになった。自分が知らない分野について取材を通して知ることができ、準備作業や舞台裏など日頃は立ち入ることができない場所に行って、話を聞くことができるのも醍醐味(だいごみ)だ。分かりやすく、よりよい文章が書けるようにもっと努力していきたい。

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 23歳、山口県出身。おひつじ座。小学生の頃から新聞小説を読むことが好きで新聞に親しみ、新聞業界に興味を持った。趣味は映画鑑賞。
 


地域のマラソンに参加、ぶっちぎりの「最下位」も新聞の意義感じ
(雲南支局・山本泰平)

 9月24日、島根県奥出雲町内で、地元グルメやJR木次線の乗車を楽しみつつ、約37キロを走る「奥出雲おろちループグルメマラソン」があった。取材を担当し、また、山陰中央新報マラソン部のランナーとしても参加した。

 ▼参加者として体験
 マラソンはリレー形式で、約10キロの区間を担当した。走る前後で、写真を撮り、参加者にインタビューをした。この日は近くで別の取材もあり、忙しかった。しかし、普段は外からイベントを見て紹介する記事を書くことが多い中、実際に参加し、参加者の一人として内側から地域のにぎわいを体験することができたのはよかった。

マラソンでゴールする山本泰平(SデジHPより)。LINEニュースでは、顔の切り抜きに「最下位」という文言が添えられた。

 知り合いの参加者から「山本! 頑張れ!」などと激励され、地域の温かさも感じた。体験記事も書き、顔写真と「最下位」という結果付きでLINEニュースで配信されると、仲間から「笑って元気がでた」などと反響があった。

マラソンでゴールする山本泰平(SデジHPより)。LINEニュースでは、顔の切り抜きに「最下位」という文言が添えられた。



 複雑ながらもうれしかった。確かに、身近な人が何かを頑張っている様子からは元気がもらえる。友の顔を見るだけでも、どこかうれしい気持ちになる。地元のさまざまな活動を取り上げる本紙の紙面は毎日、たくさんの人に元気を届けていると思うと、気が引き締まった。

▼悩んだ木次線企画
 取材のやり方や原稿の書き方など、まだまだ悩むことは多い。7月から11月まで、JR木次線の18駅と関係する人をテーマにした企画に取り組んだ。10駅を担当し、無人駅の掃除をする人や自主的にガイドをする人など木次線を守り、盛り上げようとする皆さんと触れ合うことができた。
 

存続が地域課題になったJR木次線。終点の「備後落合駅」=6月20日、広島県庄原市

 一人一人、やっていることは違う。しかし、いざ原稿にすると、駅と人という共通のテーマに引っ張られて、デスクから「固有名詞が変わっただけで内容や流れが同じ」と指摘されてしまう。テーマはそのままに、どんな切り口で、どう書くのか、毎回、悩んだ。自分自身の記事を書く引き出しや能力をもっともっと勉強して増やさなくてはと痛感した。

 毎日、締め切りに追われながら、来年は他の媒体を含めていろいろな文章に触れたいと思っている。

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 22歳。松江市出身。入社の理由は、大学のあった広島から島根に帰省する際に通る県道24号と国道9号から望める風景や宍道湖、松江の町並みが、いつ見てもきれいだったから。

衝撃の出来事、不覚にも涙腺が… 新聞記者になって~本社新人記者、2022年を振り返る<上>(Sデジオリジナル記事)