「もしあなたが感染したら どんな声かけをもらうとうれしいだらあ?」―。島根県海士町で初めて新型コロナウイルス感染者が出て2日目。観光スポット・明屋海岸の写真を背景に、こんな言葉を記したチラシが新聞に折り込まれた▼5日付の本紙こだま欄にあった同町の田中君代さんの投稿で知った。田中さんは「こんな草の根的呼び掛けのある限り、海士町は決してコロナに負けないと思った」とし、運悪く先に発症し、警告してくれた彼らに、「手痛い経験を生かしてまた、家族や島のために頑張って。応援しているよ」と温かいエールを送っている▼チラシを入れたのは「海士町民有志一同」。30~40歳代の10人ほどのグループという。行政主導で動いてきた海士町の施策を民間でも担えないか、と月2回程度集まって話し合っている。町内で感染者が出たら何ができるかも話し合ってきたといい、迅速に対応できた▼大江和彦町長によると、町内にはチラシに対して賛否両論あった。しかし町民2200人余りの地域から14人も感染者が出た非常事態の中で、誹謗(ひぼう)中傷はなかったという▼哲学者の内山節さんは9日付の本紙羅針盤で、「過去が現在を支え、現在が未来をつくる。そのことを感じられる場所こそが地域である」と書いた。生きることの中に豊かさがあるという感覚。コロナ禍への町民の対応を見てさすがは海士町と感じ入った。(富)