1887(明治20)年創業の老舗石材店を経営する。石工職人5人で墓石や灯籠の製作、文化財の石垣工事などを請け負う。国登録有形文化財の千本ダム(松江市)の耐震工事では、国宝松江城の石垣復元工事を手がけた技能を発揮して石積みを担当。日本建設業連合会(東京都)が表彰する2022年度の土木賞の受賞に貢献するなど高い技術を礎に事業展開する。

 19年7月~20年12月に施工された千本ダム耐震工事では、水源機能と文化財の外観保持を両立させながら作業を進める必要があった。

 「堤体に鋼材を垂直に打ち込んで補強する工法が日本で初めて採られ、ダムの上部を1・5メートルほど切除するとともに、工事後に完全な形で復元することが要求された。地域の大切な文化財なので、切った部分に充てる新たな石は極力、地元から調達しようと努力した。もう数が少なくなった忌部石と呼ばれる花こう岩と、色合いがよく似た岡山の水川石を入手、加工し、ジグザグに石を積み上げる『谷積み』を行い、大正時代に造られたダムの独特な景観を取り戻した」

 苦労した点や成果は。

 「作業を担ったのは夏。新型コロナウイルス禍と重なり、...