「これからも刊行を続けたい」と話す岩町功会長
「これからも刊行を続けたい」と話す岩町功会長

 島根県西部の歴史文化の研究者が、各自の考察、成果を誌上で発表する機関誌「郷土石見」が今年、創刊45周年を迎えた。1月に発刊された記念の115号も、神楽や各地に伝承が残る歌聖・柿本人麻呂、石見銀山(大田市)の研究などで12人が健筆を振るった。発行する石見郷土研究懇話会(岩町功会長)は今後も若手研究者を発掘しながら、号数を重ねる考えだ。 (板垣敏郎)

 同懇話会は、県西部在住やゆかりのある研究者が結集し1975年に発足。翌76年に郷土石見の発行を始めた。研究者は学校の教員やOB、郷土史家、県水産技術センター(浜田市)OBなどで構成。内容は県西部に関係があるテーマを前提に歴史、地理、民俗、生物など多彩だ。A5判130ページ程度の分量で、年3回発行する。

 1部1200円の郷土石見を定期購読する同懇話会会員650人が主要読者で、会員の原稿を優先的に掲載する仕組み。最新の115号は巻頭を岩町会長(91)=浜田市殿町、元高校教諭=の45周年に関する手記で飾り、人麻呂の歌集や石見銀山の石造アーチ橋の構造研究、浜田水産高校初代校長で海洋学者の丸川久俊(1882~1958年)がオホーツク海で実施した調査の功績など、充実した内容となった。

 長く刊行を続けられる理由について、岩町会長は愛読者となる会員の存在と書き手の積極性、原稿内容の正確さの3点を挙げる。会員からいつも多種多彩な原稿が寄せられ、400字詰め原稿用紙20ページを超える大作ともなると、執筆から掲載まで約3年の順番待ちが発生。内容については根拠や資料の明示を求め、質の維持を図っているという。

 購読料の未収による赤字の増加や、印刷費の未払いが続くなど苦しい時期もあり、発刊できない年も。同懇話会の支部組織の確立、購読料の値上げで対応し継続できたいきさつもある。岩町会長は「近年、神楽に対する研究賞の開設など、新たな事業も始めた。多くの人の苦労を忘れず、研究成果を伝えていきたい」と話した。