屋根を突き破っているように見える「浪花の大松」=雲南市木次町木次
屋根を突き破っているように見える「浪花の大松」=雲南市木次町木次
松の下で酒店を営む浪花幹子さん。松にちなんだ純米酒「松の滴」も販売している=雲南市木次町木次
松の下で酒店を営む浪花幹子さん。松にちなんだ純米酒「松の滴」も販売している=雲南市木次町木次
屋根を突き破っているように見える「浪花の大松」=雲南市木次町木次
松の下で酒店を営む浪花幹子さん。松にちなんだ純米酒「松の滴」も販売している=雲南市木次町木次

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 商業で栄えた雲南市木次町木次の八日市地区に、古民家の屋根を突き破るようにしてそびえる松がある。所有する酒店・浪花(なにわ)家にちなみ「浪花の大松」と呼ばれる。江戸時代に日本地図を完成させるため測量で訪れた伊能忠敬も眺めたとの逸話が残り、今も大切に浪花家が手入れを続ける。(雲南支局報道部・山本泰平)

【写真特集】屋根を突き破る謎の大松!?屋根づたいにも長く…

 松はクロマツで、高さが約12メートル、幹回りが約3メートルあり、樹齢は450年以上と伝わる。木次町誌によると戦国時代、雲南地域を治めた尼子氏や三刀屋氏に仕え、後に造り酒屋を始めた一族・土屋家が所有。1813年に伊能忠敬が訪問した際、土屋家に宿泊し松を眺めたという。明治中期になって、事業とともに屋敷と松を浪花家が受け継ぎ、現在は酒の小売り業を営む。

 所有者の浪花幹子さん(86)は、近隣住民や観光客から「大きくて立派」「手入れが行き届いている」と褒められるのがうれしく「代々受け継がれてきた松を見て喜んでもらえていることが励み」と笑顔を見せる。

 長年、手入れを頼んできた剪定(せんてい)師が80代と高齢化し、管理費の工面でも苦労は多い。それでも「歴史ある松の木を後世に伝えたい」と今日も松の下で店を開く。店では松にちなんだオリジナルの純米酒「松の滴」も販売している。

 松は、すぐ近くを流れる斐伊川の度重なる氾濫や豪雪にも耐えてきた。地元の地域自主組織「八日市地域づくりの会」の陶山桂一会長(69)は「松は地域を見守る心強い存在。みんなが知っているシンボルだ」と頼もしそうに話した。