長い間人の住んでいない空き家は20年でほぼ倍増し、2018年調査の段階で全国に349万戸あった。人口減少や都市への人口移動もあって30年には470万戸に増える見通しだ。
国土交通省はこの数を、活用などで400万戸程度に抑える目標を掲げる。現在のままでは達成は難しく、対策強化に向けて空き家対策特別措置法改正案を今国会に提出する。だが、効果は限定的と言わざるを得ない。
理由として、東京など大都市の中心部にタワーマンションが次々と建てられていることが挙げられる。住宅の新規供給は耐震化による安全の向上、省エネルギー性能の改善による地球温暖化対策に役立つのは理解できる。
一方、タワマンの増加は、大都市郊外のニュータウンや地方都市などでの一戸建て空き家の増加につながる。住宅政策のちぐはぐ感は否めないだろう。
東京一極集中も課題だ。東京圏では転出者よりも転入者が多い「転入超過」が27年続いている。国の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」は27年度の転出入均衡を目標にする。この東京独り勝ちの是正が、地方の空き家増加を抑える有効策だと指摘したい。
その上で、住宅政策については、新築の供給を増やすよりも、中古の流通をこれまで以上に重視するよう提案する。
特措法の改正案には、観光振興に取り組むエリアや中心市街地について、空き家の活用に重点的に取り組む「促進区域」とし、カフェや宿泊施設などに転用しやすくする考えが盛り込まれる。歴史的な街並みがあるような観光地での利用は期待できるが、それ以外は難しいと言える。
多くの自治体は、生活インフラの整った市街地に人を呼び込む街のコンパクト化に力を入れ始めた。この施策と連動させるため、市街地の中古住宅を優先して使い、郊外部や中山間地域では、農地付きなど移住者のニーズに合った住宅を用意して呼び込めないか。
人口減少下では活用される家の数が限られる。中心地以外では補助金を手厚くして解体を促すのも一手。自治体として、長期的な視点に立って、都市計画、まちづくりと一体となった住宅政策の促進が待たれる。
老朽化した空き家は安全面から問題となる。改正案は、一部が破損したような物件を新たに「管理不全空き家」とし、自治体が修繕などを勧告する段階にまで進めば、固定資産税の優遇の対象外とする方針。税金を高くして建物の修繕や解体を所有者に促す方策と分析できる。
それも必要だが、発生抑制にもっと注力すべきではないか。遺産相続時に家の扱いでもめると、管理不全に陥りやすい。団塊の世代からの大量相続が近づき、24年4月から不動産の相続登記も義務化される。
「わが家の終活を」とセミナーを開いたり、福祉部局と協力したりして所有者に加えて家族、親族で事前に話し合う機会をつくるよう呼びかけることが役立つ。
市町村が自治会と連携して空き家を見つけ、遠隔地に住む親族に管理を促す。管理が難しい場合には専門業者を紹介するといったきめ細かな対応も重要だ。ふるさと納税を使って定期的な管理を依頼できる自治体もある。こんな対策も広めていきたい。