短歌 安部歌子選

映画祭見果て静まるロビーより一人またひとりうつし世に消ゆ   雲 南 多田納 力

 【評】映画の余韻から抜け出せないままに一人一人現実の生活に引き戻されていく。難しい素材ながら誰もが感じる思いを無理なく一首にまとめた。

ふるまひの朝茶に潤ひ職人は一斉に立つ建前の朝         出 雲 花田 敦子

 【評】建前(上棟式)は地鎮祭と共に家を建てる際の大きな儀式である。「一斉に立つ」に建前の日を迎えた職人のほこりと快い緊張感が伝わってくる。

ふるさとの返礼品の蜜柑箱檸檬がひ...