25日は「プリンの日」。鳥取砂丘の新しい名物にと「砂プリン」を発売し、全国で話題になっているプリン専門店「Totto PURIN(トット・プリン)」(鳥取市福部町湯山)の人気の秘密に迫った。(Sデジ編集部・吉野仁士)
プリンの日は2010年、乳製品メーカーのオハヨー乳業(岡山市)が、プリンを食べてにっこり(25)してほしいとの思いで、毎月25日に制定した。同年に日本記念日協会に認定された。
「Totto PURIN(トット・プリン)」の店舗は鳥取砂丘入り口の目の前にある。看板商品の「砂プリン」(税込み450円)は砂丘をイメージし、プリンでおなじみの液体のカラメルを粉末状にして、ジャリジャリとした新しい食感に仕上げた。日本経済新聞が独自に調査した、2022年4月の「何でもランキング」でご当地プリンの全国1位、11月に岐阜県であった日本プリンアワードでは3位に当たる銅賞となり、知名度が上がった。

瓶詰めのプリンに、小さな袋に入った砂カラメルをかけて食べる。かむたびにジャリジャリ、と音が鳴る。まるで本当に砂を食べているよう…と言うわけではないが、新しい食感が楽しい。プリン自体も卵の味が濃い上になめらかで、カラメルなしでもそのままおいしく食べられるほど。新食感のカラメルとプリンそのもののおいしさがダブルでやってくる。

▼「砂」の食感、再現の鍵は
「Totto PURIN」のほか、鳥取県中東部で飲食店や美容店を経営する「OMOI」の川村諒志社長(29)は「ジャリジャリとした食感を再現するために相当苦労した」と開発時を思い返す。
店ではカラメルにパイ生地を混ぜて焦がし、粉末にしている。通常のカラメルは砂糖を焦がして作るが、これを粉末にしただけではベタッとしてしまうという。パイ生地と混ぜることで生地がカラメルの水分を吸い、砂のような食感を保てる。

ただ、両者を混ぜる際の比率がとても難しく「湿気が多い梅雨など、季節によって比率を変える必要があるデリケートな商品」(川村社長)。このため、カラメルを粉末で提供するプリン店は他にはほとんどないという。
プリン自体へのこだわりも強い。卵白は使わず卵黄のみを使うため、当然、卵の味が濃い。牛乳には白バラ牛乳で知られる大山乳業農業協同組合(鳥取県琴浦町)の鳥取県産100%牛乳を使うほか、高脂肪の生クリームも使用する。なめらかな食感を実現し、粉末カラメルとは対照的にした。また、天然のバニラビーンズを使用することで、優しく、甘い香りを付けている。

味にこだわり抜いたプリンは大人気で、ほぼ毎日、用意した千個が売り切れるほど。日本プリンアワードで出店した際は、500個用意した砂プリンが1時間で完売したという。川村社長は「かねてから鳥取砂丘の新しいお土産を作りたいという思いがあった。だんだんと注目されるようになってうれしい」と笑った。
▼「日本一」に魅力感じ移住
川村社長は名古屋市出身で、大阪府の大学を卒業した後、地方支援に取り組むコンサル会社に4年間勤めた。コンサル会社で働く中で、日本一人口が少ない鳥取県に魅力と可能性を感じ、退職して2020年1月、鳥取県に移住した。
幼少の頃からプリンが大好きで、全国各地のプリン約300種類を食べ歩いたほど。名古屋市で有名な「なめらかプリン」を生み出した人と懇意だったこともあり、漠然と「プリン店を開きたい」という思いがあった。鳥取県のシンボルとして日本海、ラクダなどが挙がる中、全国的に知られる鳥取砂丘を題材にしたプリン店を作ることを決めた。
土産物屋だった建物の一角を借り、移住からわずか4カ月後の5月30日にオープンし、もうすぐ3年になる。砂プリン以外にも、地元産のイチゴやマスカット、梨を使い、観光客に鳥取県をPRしている。今後は新たにブルーベリーのプリンを考えるほか、県西部での飲食店出店の構想を抱く。

川村社長は「鳥取砂丘に来たら砂プリンが当たり前になるよう、地道に認知度を上げていきたい」と力を込めた。
「Totto PURIN(トット・プリン)」の営業時間は平日が正午~午後5時、土日祝が午前10時~午後5時。定休日はなし。