20日、ウクライナの首都キーウで、抱き合うゼレンスキー大統領とバイデン米大統領(ロイター=共同)
20日、ウクライナの首都キーウで、抱き合うゼレンスキー大統領とバイデン米大統領(ロイター=共同)

 10年ほど前、海外貿易を手がける経営者の講演でこんな小話があったと記憶している。「日本製のテレビは値段は高いけど、10年たっても壊れません」と胸を張って売り込んだら、こう返されたそうだ。「そこまでの品質は要らない。どうせ1年か2年で買い換えるから」▼価値観の違いであり、長く続けることを美徳としないお国柄なのかもしれないと想像した。ビジネスの相手国はロシアだった▼ウクライナに侵攻を始めてから、きょうで1年。ここまで長く続くと予想しただろうか。この先さらに犠牲を強いてまで戦い続ける価値がどこにあるのか、考えると胸が苦しくなる。あろうことかロシア国内でプーチン大統領の支持率は8割を超えているという。侵略を正当化するプロパガンダも影響しているに違いない▼このニュースはどう伝えられただろう。バイデン米大統領がウクライナを電撃訪問し、欧米の連帯した支援をアピールした。武器の追加供与も発表した。終結への一歩とは逆に、反発の応酬で泥沼化を決定付けたように思えてならない▼『うさぎのいえ』というロシア民話の絵本がある。キツネに家を乗っ取られたウサギを助けようと、イヌやヒツジが力に力で対抗しようとするが、かなわない。最後は力の弱いニワトリが知恵を使って追い出すことに成功した。強力で壊れない武器は要らない。戦争を終わらせるすべはないものか。(史)