「読むのに、端末も、ソフトも、電源もいらないんだ」「へえ。そんな便利なもの、誰が発明したんだろう!?」-。先日実施された島根県の公立高校入試で、国語の問題にこんな件(くだり)があった▼書物(紙の本)がインターネットに取って代わられ、世の中から消えてしまった未来の世界でのやりとり。失われた書物なるものを想像しながら、「いやいや、昔は世界中に溢(あふ)れていたらしい」「昔は便利だったんだね!」と会話は続く▼当たり前のように享受しているインターネットの利便性もいろんなものを前提としている。電源が切れるなど、そのどこかが不調になれば、利便性もたちどころに失われる。文明の利器にも泣きどころがあることを入試問題文は告発しながら、返す刀で紙の本のメディアとしての優位性を強調する▼ある目的に合わせて情報を収集、整理する編集という力。紙の本の一覧性と信頼性を支えているのに対し、ネットは自由奔放であるが故に、中身は玉石混淆(こんこう)を避けられない。新聞にも通じる指摘を入試問題を通じて改めて突き付けられると、励まされるやら緊張するやら▼「ネットに依存する中学生たちに活字の価値を考えさせたい。溢れる情報には責任を伴うことも」と、県教委は出題意図を説明する。紙の本が布地なら、ネットは膨大な量のバラバラの糸に問題文は例える。着心地が良く丈夫で長持ちする布地を織らなければ。(前)