物騒な物言いから強い覚悟が伝わった。「下手をしたら(反対派に)殺される。ただ、ここで判断しなければ福島は復興できない、と思った」▼発言の主は、廃炉作業が進む東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町の伊沢史朗町長。原発事故に伴う県内の除染で生じた汚染土や廃棄物を保管する中間貯蔵施設の受け入れを決めた際の苦悩を振り返った▼昨年12月に町を訪ねた。他の自治体で避難指示の解除が進む中、今も町面積の95%が帰還困難区域のままで、住民の帰還は果たせていない。中間貯蔵施設がある太平洋沿岸地域は東日本大震災の大津波にのみ込まれた。今も殺風景な更地が広がる▼それでも復興に向けた息吹が見えた。町は貯蔵施設の北側を復興産業拠点として整備。昨年11月時点で17件の企業立地が決定した。そのうちの一つが、吸収と速乾性に優れた「魔法のタオル」の開発で知られる浅野撚糸(岐阜県)。福島大出身の浅野雅己社長が「双葉町とともに夢のある未来を築いていきたい」と工場建設を決意。昨年4月に町のイメージカラー3色を取り入れたコラボタオルマフラー「ダキシメテフタバ」を発売した▼商品の広告にある伊沢町長のコメントからも強い覚悟が伝わってきた。「私たちは、10カウントを聞きません。私たちのファイティングポーズを見てください」。あの日から10年。復興に向け闘う被災地を応援したい。(健)