全国の製造業者などが競う「けんかごま大会」がある。金属などの高度な加工技術を駆使し、アイデアと技術力がぶつかり合う対決は、シンプルだが奥深い。大会に挑戦する出雲市内の企業を訪ね、魅力に迫った。
 (出雲総局報道部長・松本直也)

【関連動画】全日本製造業コマ大戦北名古屋場所の動画(前編 後編
(前編)

 

 

(後編)

 

 



 訪ねたのは出雲市下古志町にある吉川製作所。電気機械や産業機械の部品製作などを手掛け、ステンレス加工に強みを持つ。技術の高さが評価され、JR西日本の観光列車「あめつち」の繊細なエンブレムを手掛けた。

 2013年に創部したのがコマ部。金属加工や設計に携わる社員5人のメンバーがおり、これまで全国で開催される43大会に出場し、優勝は15回、準優勝7回を誇る。

 2月、新型コロナウイルス禍で3年ぶりに出場した東京都、愛知県内の大会で連続優勝を果たし、幸先の良い再スタートを切った。目標は24年2月にある全国大会での初優勝だ。

直径25センチの土俵

 けんかごまの大会はNPO法人全日本製造業コマ大戦協会(愛知県北名古屋市)が運営する。数年に一度全国大会、各地区予選があるほか、毎年、全国各地で開く「場所」と呼ばれる大会や独自ルールで行う特別場所が開かれる。

北名古屋場所で対決する吉川製作所の吉田雅彦さん(右)=愛知県北名古屋市(NPO法人全日本製造業コマ大戦協会提供)

 全国大会(G1)、地方ブロック予選大会(G2)、場所(G3)と大会にグレード(G)が設定され、成績によってチームにポイントが付与され、年間チャンピオンも決まる。

 戦う舞台はすり鉢状になった直径25センチの土俵。1対1で同時にこまを回し、相手より長く回り続けるか、土俵の外にこまを出した方が勝ち。大会によって異なるが、2連勝か2先勝したチームが勝ち進む。

 最大の魅力は、各チームがつくるユニークなこまたちだ。規定があるのは静止状態の大きさが直径2センチ以下、高さ6センチ以下というサイズのみ。重量、材質、形は自由なため各チームが「最強」を目指し、さまざまなタイプのこまを作り出す。
 

加工機の前でこまを見る吉田雅彦さん(左)と松原匡吾さん=出雲市下古志町、吉川製作所

 例えば「低重心型」は安定感と相手をはじく攻撃力があるものの、持久力がない。一方、...