方言に関して出雲(島根県東部)と石見(島根県西部)は境界部の仙山峠を挟んでガラリと変わると聞く。因幡(鳥取県東部)と伯耆(鳥取県中・西部)はそうでもない。鳥取県には東部の鳥取弁と西部の米子弁の中間に中部の倉吉弁がある。鳥取弁と米子弁はだいぶ違うが、倉吉弁は鳥取弁とも米子弁とも似た部分がある。いわば因幡と伯耆は段階的に方言が変わり「因幡弁/伯耆弁」という分け方はしない。「倉吉ことばの会」(桑本裕二代表)を取材するうちに改めて感じ、興味深い。(安来支局長・桝井映志)
 

倉吉ことばの会で対談する(左から)桑本裕二氏と桑本みつよし氏=2022年9月、倉吉市駄経寺町、倉吉未来中心

 倉吉弁で鳥取弁と似ていると思うのは例えば、相づちを打つ時に使う「さいな」、よく会話に挟む「ちゃなんで」(~というように)といった言葉だ。
 

 アクセントも近い。倉吉ことばの会で聞いた例を挙げると、倉吉東高校や米子東高校を地元で「ヒガシコー」と呼ぶ時、倉吉弁は「シ」にアクセントがあり「コー」で下がるが、米子弁は「ガ」にアクセントがあり「シコー」で下がらず平板に発音するという。鳥取弁で鳥取東高校を「ヒガシコー」と呼ぶ時のアクセントは倉吉弁と同じだ。

 倉吉市出身の桑本代表によると、方言を話題にする場合、「だらず」(馬鹿)のような単語が分かりやすく、取り上げられやすい。だが、普段、自覚しにくいアクセントやイントネーションの違いは興味深い研究テーマだという。

 鳥取市出身の記者も米子市や松江市に赴任して気づいた。例えば「犬(イヌ)」。米子弁や松江弁(出雲弁?)は「イ」に、鳥取弁は「ヌ」にアクセントがある。「ヌ」にアクセントがあると米子弁や松江弁では「去(い)ぬ」(帰る)になるようだ。鳥取弁は「去ぬる」も「犬」もアクセントは同じだ。また鳥取弁はよそ行きの改まった会話の時、語尾「~です」「~ます」が疑問文でなくても尻上がりになる。米子弁や松江弁はそうならない。

 さて一方で、倉吉弁で米子弁と似ていると思うのは例えば「~だがん」(~だよね)という語尾表現。また倉吉弁で「ほんに、きゃー」などと使う感嘆詞「きゃー」は米子弁の「けー」と似た感嘆詞かと思う。

 あと、感覚的な私見だが、...