外国人の技能実習、特定技能両制度の見直しを検討している政府有識者会議は、内外で人権侵害の批判を浴びた技能実習を廃止し、新たな制度の創設を提案する中間報告を示した。新制度の目的に、技能実習にはない「人材確保」を盛り込み、労働力として明記した上、原則認められていない転籍の要件を緩和する方向性を打ち出した。
また政府は特定技能制度を巡り、熟練労働者として家族帯同を認め、条件を満たせば永住も可能になる在留資格「特定技能2号」の受け入れ対象を、建設と造船の2分野から農業や宿泊などを含む11分野に拡大する方針を固めている。いずれも、外国人材受け入れの大きな転換点になろう。
少子高齢化が急速に進み、外国人の働き手抜きには労働力の確保は見通せない。さらに国際的な人材獲得競争が激しさを増し、途上国の経済発展も目覚ましい中、このままでは日本は「選ばれる国」たりえないという危機感が中間報告には、にじむ。しかし技能実習廃止を巡っては「看板のかけ替え」に過ぎないとの指摘も相次いでいる。
監理団体や送り出し機関を通じた受け入れの枠組みは維持され、働き手が借金を背負って来日し、理不尽な扱いを受けても声を上げられないなど、人権侵害につながる構造的な問題は残るからだ。抜本改革を見据え、秋の最終報告に向けてさらに議論を深める必要がある。
技能実習制度は発展途上国への技術移転や人材育成による「国際貢献」を掲げ、1993年に始まった。だが実際には実習生の多くは「安価な労働力」として扱われ、長時間労働などを強いられてきた。支援団体には「残業代を払ってくれない」「妊娠を報告したら退職を迫られた」といった訴えが後を絶たず、多数の失踪者も出ている。
2017年施行の技能実習適正化法によって外国人技能実習機構が、受け入れ先を監督する監理団体や職場を定期的に実地検査し、悪質な違反行為について行政処分する仕組みも整えられた。
とはいえ、検査は十分に行き届いていないとみられている。監理団体の運営は受け入れ先事業者が負担する監理費で賄われており、実習生よりも事業者の事情が優先されるという指摘もある。
技能実習の廃止に異論はない。ただ新制度でも、監理団体は今と同じ役割を担うとされる。さらに現地の送り出し機関を介した受け入れも変わらない。実習生は送り出し機関で求人情報を得るが、その過程で悪質なブローカーなどに多額の手数料を取られ、半数以上が借金をして来日する。
受け入れ先で何があっても、借金を返せなくなるため泣き寝入りするしかない。しかも新制度には「人材育成」の目的を残すという。それを理由に転籍も家族帯同も認めず、人権侵害の批判を招いたことを忘れてはならない。支援団体や専門家の間には「技能実習制度の実質的な存続」との厳しい見方もある。
全体として、まだ中途半端な見直しにとどまっているとの印象を拭えない。これでは外国人の長期就労を可能にし、日本社会のシステムを維持していくという目標を達成するのは難しいだろう。国がもっと主体的に人材受け入れに関わり、外国人の人権が守られる仕組みはもとより、日本語教育や生活支援にも本腰を入れることが不可欠だ。