共同記者発表する岸田首相(左)とガーナのアクフォアド大統領=1日、アクラ(共同)
共同記者発表する岸田首相(左)とガーナのアクフォアド大統領=1日、アクラ(共同)

 岸田文雄首相がアフリカ4カ国歴訪を終えた。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に向けて途上国と連携を強化する狙いで、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークの各国首脳と意見を交わした。

 モザンビークでの記者会見で首相は、ロシアや中国の動向を念頭に「アフリカの東西南北の主要国を訪問し、力による一方的な現状変更の試みは世界のどこでも認められないことを確認した」と述べ、「G7での良い議論につながる意義のある訪問になった」と成果を強調した。

 新興・途上国の多くは、ロシアのウクライナ侵攻などによる食料・エネルギー危機で苦しんでいるが、必ずしもG7にくみせず中立的な姿勢を取る。対ロシア制裁に批判的な国も多い。

 首相はG7と途上国の連携について「個々の国が直面する多様な課題に耳を傾け、解決に向けて協力していかなければ賛同を得がたい」と説明、途上国支援に注力する考えを示した。

 19日に開幕するG7広島サミットの討議に具体的にどう反映させることができるか、議長国の力量が問われる。各国をG7に引き寄せるという意味では歴訪に目立った成果は見られず、地道な取り組みを重ねる以外ないことを改めて印象づけた。

 エジプトのシシ大統領との首脳会談では、4月に戦闘が起きた隣国スーダンの情勢安定化に向け、緊密に連携することを確認した。スーダンでは停戦を定着させ、民政移管プロセスを再開させる必要があり、日本も和平実現と避難民への人道援助に力を尽くしたい。

 ガーナは民主主義が進んだ国として知られるが、財政悪化のため昨年末に事実上のデフォルト(債務不履行)に陥った。アクフォアド大統領との会談では、中国の過剰融資で返済が行き詰まって支配を強められる「債務のわな」に関連し、透明で公正な開発金融の重要性で一致した。

 日本企業が多数進出するケニアのルト大統領とは、産業協力を加速させる対話創設で合意。資源国として知られるモザンビークのニュシ大統領とは、エネルギーと経済安全保障の重要性を確認した。

 ガーナとモザンビークは日本とともに現在、国連安全保障理事会の非常任理事国であり、安保理改革を含めた国連の機能強化で連携することも確認したものの、どのように実現するかは難題だ。

 G7側としては支援強化で、これらの国がロシアや中国に傾斜することを防ぎたい思惑がある。しかしアフリカでは、モザンビークのように旧ソ連時代に支援を受けてロシアとの関係が伝統的に深い国や、エジプトをはじめ小麦などの食料をロシアに頼る国も多い。各国の事情は極めて多様だ。

 アフリカは今世紀に入って急速な経済成長を遂げた国が少なくない。新型コロナウイルス禍による財政難や食料・エネルギー危機にあえいでいるが、長期的には「最後の巨大市場」として世界の注目を集める。

 約14億人のアフリカの人口は今世紀半ばに25億人となると予測されており、人類の4人に1人はアフリカ人になる。経済が成長し、国際秩序づくりに果たす役割も拡大、世界の平和と繁栄の鍵を握る大陸になるだろう。長期にわたってアフリカ各国と多様なつながりを築く努力を、粘り強く進めなければならない。