先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が19日に開幕する。広島市内には全国から招集された警備関係者があちらこちらに配備され、緊迫ムードに包まれている。開催を目前に、本番へ向けピリピリとした空気の張り詰めた市内を歩いた。(広島支社・新藤正春)
主会場のグランドプリンスホテル広島(広島市南区)周辺と、平和記念公園や報道陣の取材拠点となる広島県立総合体育館が集まる市中心部では、警察官や警備員の姿が目立つ。道路にはパトカーなど警察関係車両がひっきりなしに行き来する。島根県民にもなじみ深い広島バスセンター向かいの広島県庁駐車場は、警察車両だらけだ。


サミット初日の19日に岸田文雄首相夫妻がG7首脳夫妻を出迎える平和記念公園は4月下旬から周囲をフェンスで囲われている。




フェンスの外側には、ドローンの飛行を禁止する「小型無人機等飛行禁止指定地域」、違法な拡声器使用は罰せられると知らせる「静穏保持指定地域」の案内看板が掲示され、緊張感がにじむ。18日午後からは園内立ち入り禁止となった。
公園内では多くの警察官が昼夜を問わず、異変を見逃さないよう警戒を強めていた。10日夕には、園内のベンチで不審物が発見され、現場周辺の立ち入りが一時規制される事態もあった。

平和記念公園を訪ねた17日午後、園内は修学旅行生や観光客、訪日外国人でにぎわっていた。その一方で、パトロールに当たっていた岐阜県警などの警察官は、原爆死没者慰霊碑といったモニュメントの周囲だけでなく、樹木に覆われる薄暗いエリアにも目を光らせていた。

この日、静岡市から仕事で訪れたという会社員男性(51)は「原爆ドームや平和記念資料館を見たくてやってきたが、警備の厳重さに驚いた。(18日から)公園にも入れなくなるとは知らなかった」と話した。
公園を出て、グランドプリンスホテル広島がある宇品島方面に、広島電鉄の路面電車で向かってみた。
瀬戸内海に浮かぶ宇品島は市中心部から南に約5㌔。本土とは1本の橋でつながる。約1500人が暮らし、ホテルのほか、学校や病院がある。
宇品島は15日午後から、外務省発行の識別証を持つ住民や関係者以外は通行できなくなった(21日まで)。橋に通じる道路には蛇腹型の移動式バリケードが置かれ、警察官が辺りを警戒している。

近くの女性(78)は「警備が厳重になり、日に日に緊迫感が増している。とにかく無事に終わってほしい」と願っていた。


警察庁は、警備に当たる人員について、東京以外で開催されるG7サミットとしては最大規模となる最大時2万4000人と発表した。4月に岸田文雄首相の演説会場で起きた爆発事件を受け、職務質問や不審物捜索などに従事する警察官を増員したという。世界各国の首脳が集まる中で、まさに「アリの這い出る隙間もない」警備を目指しているのだろうか。
緊迫感は19日に向けてさらに高まりそうだ。物々しい雰囲気に、市民や観光客に動揺も見られる。サミットが無事に終わり、被爆地・広島で実施した意義が世界に伝わることを願っている。