池田久之助さん(左から2人目)の目撃証言を記録する特定失踪者問題調査会のメンバー=島根県隠岐の島町那久、那久岬
池田久之助さん(左から2人目)の目撃証言を記録する特定失踪者問題調査会のメンバー=島根県隠岐の島町那久、那久岬

 北朝鮮による拉致を否定できない行方不明者の家族を支援する、特定失踪者問題調査会(東京都)の現地調査が18、19の両日、島根県隠岐の島町と西ノ島町、海士町であった。北朝鮮船による被害や工作員とみられる人物の目撃情報など、国境離島として北朝鮮と対峙(たいじ)してきた住民の証言を、メンバー15人が聴いた。

 調査会によると、北朝鮮拉致に関する情報収集を全国各地で行う現地調査は、新型コロナウイルス禍に伴い4年ぶりの実施で、隠岐諸島では2度目となった。

 18日は隠岐の島町の関係先4カ所を訪れた。同町加茂の漁業・祐生水産では野津千寿夫社長(72)に聞き取り。約20年前に近海で巻き網漁を操業中、北朝鮮の貨物船が漁網を突っ切り、網が損傷したと証言した。海上保安庁に通報したが「結局補償はなく、やられ損だった」と伝えた。

 2012年1月に同町那久岬沖に木造船が漂着し1人死亡、3人が保護されたのを目撃した近くの漁師、池田久之助さん(85)は「生存者が遺体の火葬を求めていたと聞いた」と回顧。19年1月に同町蔵田で木造船が漂着し4人が上陸した事案では、乗組員が船のシャフトとスクリューを外して、船上に置いていたという近隣住民の目撃談を述べ、いずれも不可解な行動があったと振り返った。

 19日は、1980年2月に工作員とみられる男が目撃された海士町豊田の明屋海岸などを訪れた。西ノ島町浦郷の国賀海岸では町内の70代男性が、約45年前に小型船で上陸しようとした4人組の不審な男たちについて証言した。

 調査会の荒木和博代表(66)は「隠岐諸島は朝鮮半島と近く、国境の島だと実感した。島の守りを固めるべきだ」と話した。

 (鎌田剛)