「人生わずか50年」という言葉通りの平均寿命(0歳児の平均余命)だった終戦直後から約75年。今では「人生100年時代」と言われるようになった▼厚生労働省の調査では、2021年の平均寿命は前年よりわずかに縮んだものの、男性が81・47歳、女性が87・57歳。75歳の人の平均余命は男性が約12年、女性は約16年で、40年前に比べて男性は約4年、女性は約6年長くなった▼長寿になるのは喜ばしいが、ゴールまでの距離が延びると、さらなる老後が待ち受けることになる。おまけにこの先、医療や介護など社会保障の負担も増えそうな雲行き。問題は、その場合の考え方だ。老後用の資金を消費や投資に回し、元気なうちに楽しむ積極派を目指すのか。それともさらなる老後に備えて生活を切り詰める慎重派になるか。大別すると、この両派に分かれるだろう▼社会保障に詳しい淑徳大の結城康博教授によると、高齢者世帯の現預金は約626兆円に達するという。巨額の資金が「塩漬け」に近い状態だ。さらなる老後の先に何があるのかと思うが、それまでが不安な人が多いようだ▼作家で元経済企画庁長官の故堺屋太一さんはかつて、各自が85歳までに資金を使い切り、その後は国が完全保障する制度を提起したことがあったそうだ。「人生100年時代」にふさわしい「安心保障」の仕組みをつくれれば経済の活性化にもつながる。(己)