この時期だからだろう。往年の名画のタイトルが思い浮かんだ。黒沢明監督の『七人の侍』。戦国時代、野武士の略奪に悩む農民から雇われた7人の侍が軋轢(あつれき)を乗り越え、村を守る物語。来年、公開から70年を迎える▼米国の西部劇の手法を取り入れながら、公開後は反対に『荒野の七人』として米国でリメークされた。影響力は絶大。ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』シリーズにも類似点は多い▼さて、こちらの7人は何を守り、世界にどんな影響を与えるだろうか。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)がいよいよ開幕する。舞台は被爆地広島。地元選出で議長を務める岸田文雄首相は「核兵器のない世界」の実現を掲げる。ウクライナ侵攻でロシアのプーチン大統領が核兵器使用をちらつかせる中、当然の主張だ。中国や北朝鮮の脅威もある▼一方で、G7には核保有国の米国と英国、フランスが参加。日本が米国の「核の傘」に守られている矛盾もはらむ。G7として核廃絶に向けたメッセージを世界に発信したとしても、実効性がなければ意味がない▼『七人の侍』に戻ると、野武士を撃退しながらも、4人の仲間を失ったリーダーの島田勘兵衛が最後にこうつぶやく。<今度もまた、負け戦だったな。勝ったのはあの百姓たちだ。わしたちではない>。広島に集う現代の〝七人の侍〟は、何を「勝利」と捉えているだろう。(健)