北海道富良野の大地で農薬・化学肥料を使い、大型機械も駆使して農業の近代化にひた走る草太が言う。「スーパーの棚に虫食いだらけのホウレンソウと艶々したホウレンソウが並んでたら、どっち買う? 都会の消費者は見た目がきれいな方を選ぶ。そういう時代だ」▼逆行するように無農薬の土作りに使う炭焼きや牛ふんの堆肥作りにいそしむ主人公の五郎。テレビドラマ「北の国から」のシリーズ「’98時代」は食と農の在り方に問いを投げかける。25年の月日が流れ、時代は変わったのだろうか▼国内の耕地面積に占める有機農業の割合は1%にも満たない。そんな中、楽天グループの農業法人が栽培、加工する有機野菜の商品は引き合いが強いという▼見た目はかつてと随分違う。ホウレンソウやブロッコリーをカットした通販の冷凍商品で、パッケージに「国産オーガニック」と印字してある。白米の代わりに食べる、細かく刻んだブロッコリーライスなる商品も。いくら環境や体に優しいといっても時短・簡便調理で食べやすくないと選ばない-。そういう時代なのだろう▼楽天グループは島根県西部の石見地方で耕作放棄地を活用して直営農場を整備し、有機野菜の産地づくりと人づくりに乗り出す。まずは邑南町で来月にサツマイモの苗を植える。有機農産物の普及はまだこれから。この地に新しい時代の農業が根を張り、実るのを待つ。(史)