▽第四章 標的(九)

 来栖は無実の人のように哀願した。

「あの電話は、矢上さんたちが心配で」

「嘘を吐くなっ!」

 小坂は薮下が怒鳴るのを初めて聞いたが、低音と破(は)擦...