ドローンに荷物を載せる島根県美郷町職員=同町久保、町防災公園
ドローンに荷物を載せる島根県美郷町職員=同町久保、町防災公園

 高齢化が進む中山間地域の美郷町で、小型無人機ドローンを使った物流サービスの準備が進んでいる。町と宅配業者が組み、2020年度は町防災公園から公民館まで荷物を運ぶ試験飛行で、安全な飛行ルート選定といった検討課題を浮かび上がらせた。今後も試験飛行を重ねながら課題解決策を練り、22年中に実用化したい考えだ。 (佐伯学)

 「テイクオフ」。1月14日、美郷町久保の防災公園からドローンが飛び立った。離陸ボタンを押したのは、約650キロ離れた佐川急便(東京都)の東京本社にいるオペレーター。ドローンは6・4キロ離れた同町簗瀬の吾郷公民館まで事前に入力した江の川上空のルートを自動操縦で飛び10分後、公民館前に着陸した。

 試験では、町特産イノシシ肉「山くじら」の缶詰など宅配便で需要の高い重さ2キロの荷物を運んだ。公民館で職員が荷物を確かめ、バッテリーを交換。ドローンは再び飛び立ち、防災公園に戻った。荷物への衝撃はトラック輸送より少なかった。

 2日間の試験飛行では、衛星利用測位システム(GPS)や、ドローンから見た映像を送る携帯電話回線LTEの電波が一時つながりにくくなったり、飛行ルート上に把握していない送電線が見つかったりした。電波や障害物の影響を受けず安全に飛行できるルートの選定や、公民館から町民宅までの空白区間の対応が検討課題になる。私有地の上空も飛ぶなら、町民の理解も必要になる。

 今後、技術革新が進んで飛行距離や積載量が増えると考えられ、ドローン物流は大きな可能性を秘める。町企画推進課の矢渡正宏プロジェクト推進係長は「広島県三次市など江の川を通って町外まで飛べるようになれば、活用の幅はさらに広がる」と期待する。

 町がドローン物流に取り組む背景には町が抱える課題がある。人口は約4400人で、ピークの1950年代の4分の1に減り、高齢化率は47%に上る。ホームセンターやドラッグストア、総合病院がない。近隣市町への通院や買い物の交通手段だったJR三江線は2018年に廃止された。

 物流業界は人手不足が深刻。集落が点在し、輸送効率が悪い中山間地域は、現在の物流サービスが維持されなくなる懸念もある。

 町はオンライン診療と絡めた医薬品の配送にも活用する構想を描き、町が抱えるハンディを補う考えだ。

 嘉戸隆町長は「物流の確保で町は全国でも一番厳しい状況に置かれている。新しい技術を活用して町民の生活を守りたい」と話す。