多くの児童が参加した2019年の松江市連合体育大会の様子(松江市小体連提供)
多くの児童が参加した2019年の松江市連合体育大会の様子(松江市小体連提供)

 小学生が市町村や各地域ごとに集まって開かれる体育大会の見直しが、山陰両県で広がっている。松江市では2023年度以降の中止を決め、ほかの市町村でも対象学年を絞ったり開催の形式を変更したりするなど動きが出ている。教員の働き方改革と少子化といった児童を取り巻く環境の変化が背景にあるとみられ、教員ら関係者間でも賛否が割れている。 (報道部・古瀬弘治)

 松江市小学校体育連盟は、新型コロナウイルス禍で見送りが続いていた小体連の陸上大会を23年度以降中止する事を決めた。

 市内の小学校教員は「教職員の負担軽減との声や児童の成果発表の貴重な場との声もあり、賛否が割れた」と明かす。別の教員は「体力向上や意欲のためにも、公教育として取り組む意味があった」と中止を残念がった。

 議論の過程では他校と競う機会が児童の意欲や体力向上、教員の指導力向上につながるといった意見が出た。一方、参加者が約3700人となる大会は出場できない児童が出ること、事前練習や運営を担う教職員の負担が大きいことなど否定的な意見も多かった。

 市小体連の杉原孝尚会長(来待小学校長)は「心苦しいが教員主体の大規模な大会は難しいと判断した。各学校単位で取り組み、児童の体力向上につなげたい」と話す。

 両県の各自治体や小体連などに取材したところ、同様の大会は本年度、大田市、米子市が中止。島根県吉賀町では21年度以降中止している。

 鳥取県小体連は、陸上と水泳に関し、近年各市郡の大会を勝ち上がった児童の上部大会を開いてきたが、水泳は19年度以降、陸上は23年度以降中止した。出場する児童が一部に限られることや、教職員の負担が大きく、通常の学校運営にも影響が出ることなどについて声が上がったという。

 上部大会の中止やコロナ禍を受けて米子市は、本年度の陸上、水泳両大会の開催を取りやめ、境港市は水泳大会を来年度以降開催しないという。

 一方、島根県邑智郡では本年度の大会から形式を変更。5月に「第1回郡小体連陸上祭」を開いた。昨年度まで中学校と開催していたが、中学総体が地区開催となったのを受け、小学校5、6年生の全員が対象の陸上の大会に切り替えた。

 佐々木挙匡会長(矢上小校長)は、教職員を取り巻く環境は同じだが「どうすれば子どものためになるかを考えた」と振り返り、教員の指導力向上にも必要な機会だとした。

 島根県立大短期大学部長の梶谷朱美教授(体育教育学)は、多忙な春先に大会の練習や準備が必要な教員の負担に理解を示しつつ、「他校との合同大会は持ち味や可能性を伸ばす目標になり、教員などの交流の場にもなる」と意義を語る。

 今後のあり方について、「競争だけでなく、楽しむという生涯スポーツの観点から種目や運営の手法を検討し、新たなあり方を考えることが重要ではないか」と投げかける。

 子どもたちの成長を促す機会となる大規模な大会と教職員の負担軽減をどう考えるか。今後、多くの地域で議論を呼びそうだ。