インディゴ・ガールズの「クローサー・トゥ・ファイン」(1989年)を名曲たらしめている一つの大きな要素であるホットハウス・フラワーズにも触れたい。前年の1988年にデビューアルバム「ピープル」を発表したアイルランドの5人組。同じくアイルランド出身で当時既に世界的バンドだったU2のボノが高く評価したというエピソードを伴う鮮烈なデビューだった。
デビューアルバムのジャケットが好きだ。ギターにアコーディオン、(たぶん)ブズーキを抱えたメンバーの写真から、アイリッシュトラッドの豊かな音楽が聞こえてきそうだし、何より音楽への愛情が感じられる。

実際その通りで、アイルランドの伝統音楽に根ざしつつ、ロックやR&Bなど幅広い音楽性を持つ。最大の魅力はボーカル、リアム・オメンレイのソウルフルな歌声。よく言われるように、同じアイルランドの大御所ヴァン・モリソンを思わせるところがある。ヒューマニズムというか、人間愛というか、とても温かいものが伝わってくる歌声だ。音楽の力を実感させてくれるバンドである。

初アルバム「ピープル」から「アイム・ソーリー」「ドント・ゴー」がヒットした。ポップな「ハレルヤ・ジョーダン」もいい。90年のセカンドアルバム「ホーム」も前作をバージョンアップしたような傑作。「ギヴ・イット・アップ」は気持ちを鼓舞してくれる。93年のサードアルバム「ソングス・フロム・ザ・レイン」は前の2作に比べると地味だが、心に染みる1枚。5年間の休止期間を挟み、現在も3人で活動している。(洋)