新型コロナウイルスワクチンの1日当たり接種回数が、医療従事者向けも含め50万回前後となり、加速していることが政府の集計で31日、分かった。少なくとも1回接種した高齢者らは466万人で対象人口の8人に1人(13・1%)に達した。接種率は地域によって差が見られ、緊急事態宣言の対象地域では遅れる傾向にある。ペースが速いほど感染者が減るとの試算もあり、政府は1日100万回を目指す。 

 

 打ち手確保が課題となる中、厚生労働省の検討会は31日、ワクチン注射を救急救命士や臨床検査技師にも認めると大筋で了承した。

 集計によると、65歳以上を主な対象とした高齢者接種は30日までに498万回、医療従事者向けは28日までに736万回の接種が行われた。

 都道府県別に高齢者接種の実施状況を見ると、1回目の接種が終わった人の割合は和歌山が最多で26・8%。山口の24・5%、鳥取と佐賀の22・5%が続いた。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象となっている北海道や神奈川、三重、兵庫は10%未満と接種率が低い傾向が見られた。

 高齢者接種は4月12日に開始。当初、供給量が限られていたことから接種回数は1日1万回に満たなかったが、5月10日の週には1日約10万回、17日の週は約20万回と週を追うごとに増加。医療従事者への接種を加えると直近1週間の平日では1日50万回前後で、60万回を超える日もある。

 政府は6月中旬以降は1日100万回接種したいとしているが、打ち手の確保など課題も多い。仮に6月中旬まで1日60万回で推移し、中旬から1日に100万回接種したとしても、政府目標である7月末に高齢者約3600万人への接種を完了させるのは難しい。

 政府対策分科会の尾身茂会長は、接種した人が半分くらいになると、感染が広がりにくくなる「集団免疫」の効果が出始め、医療体制の負荷も軽減されるのではないかとの見方を示している。

 政府は接種情報を一元管理する「ワクチン接種記録システム(VRS)」に現場で入力された情報などを基に高齢者接種を集計。都道府県が市町村を通じて独自に集計した結果と異なるケースもある。 政府が31日に初めて公表した都道府県別の高齢者ワクチン接種状況は、接種率が鳥取1回目22・5%、2回目3・7%、島根1回目13・4%、2回目1・9%で、いずれも全国平均を上回った。

 接種対象が約18万人の鳥取県は1回目が3位、2回目は2位で、接種の「先進県」の一つと言える。

 県医療・保険課の西尾泰司課長が「早い段階で医師会や看護協会との意思疎通を図ることができたのが要因とみられる」と話すように、打ち手や診断医の確保が進んだことが、今のところ奏功している。

 ただ、両県とも現時点では目標としている7月末までの接種完了は見えていない。

 残り約2カ月間で全員が2回目の接種を完了するには、例えば対象23万人の島根県では、1回目の接種を完了するだけでも1日3200人を超える接種が必要となる。

 県が公表している1回目の接種人数に基づくと、26日から5日間の実績(約1880人)の1・7倍を1日でこなす必要がある。松江市などで今後本格化する個別接種、浜田市が検討する集団接種など、打ち手確保、会場整備などの市町村ごとの状況に応じた対応が必要。両県は人材確保などで後方支援する。

      (多賀芳文)