引退セレモニーで胴上げされる阪神の横田慎太郎外野手=2019年9月26日、鳴尾浜球場
引退セレモニーで胴上げされる阪神の横田慎太郎外野手=2019年9月26日、鳴尾浜球場

 プロ野球広島の抑え投手として「炎のストッパー」と呼ばれた津田恒実さんが脳腫瘍で亡くなったのが1993年7月20日のこと。32歳の若さだった▼病気が判明した後も、座右の銘の「弱気は最大の敵」を胸に想像を絶する闘病生活を送り、もう一度マウンドを目指した。当時、小学生だった当方はテレビの特集や書籍で病魔との闘いを知り、自らの父親より若い津田さんの死に衝撃を受けた▼あれから30年後の今月18日。同じプロ野球オールスター戦の時期に、同じ脳腫瘍と闘った一人の元プロ野球選手の訃報に接した。阪神の外野手だった横田慎太郎さん。まだ28歳だった▼高卒3年目の2016年に開幕スタメンに名を連ね、将来を嘱望されながら翌年に病気が判明。手術後、懸命にリハビリを続けるも、視力が回復せず、19年に引退を余儀なくされた。ただ、体調が戻らない中で迎えた2軍での引退試合でセンターの守備につくと、本塁へ生還を狙った走者をノーバウンド返球でアウトに。「奇跡のバックホーム」として書籍化もされた。横田さんは試合後のセレモニーで「つらいこともあったが自分に負けず、自分を信じて、自分なりに必死に練習をしてきて本当に神様は見ていると思った」と語った▼島根県ではきょう、中学と高校野球の決勝を迎える。当たり前に野球ができる幸せをかみしめ、最後まで諦めずに全力でプレーしてほしい。(吏)