創価学会名誉会長 池田 大作
創価学会名誉会長 池田 大作

試練越え豊かに栄える 地域で輝く女性の活力

 一番苦労した人が、一番幸せになる。

 一番試練を越えた地域が、一番豊かに栄える。

 1972(昭和47)年9月17日、宍道湖畔の松江の体育館で、大好きな島根の宝友(ほうゆう)と記念の写真に納まり、確認し合った信条です。2カ月前の豪雨の被害から立ち上がった友人たちの笑顔は、凜(りん)と輝いていました。

 翌年、「人間の復活」をテーマに、豊かな伝統芸能を若い世代が継承する郷土まつりを行ったことも、金の思い出です。

 当時、高度経済成長の一方で進む過疎化にも、島根の挑戦は先駆けでした。

 ほぼ半世紀を経て、今、「少子高齢化と人手不足の対策は島根に学べ」「未来の希望のモデルは島根にあり」などと注目されていることは、うれしい限りです。

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 島根には「労苦をいとわぬ鍛錬の光」があります。

 古来、鳥取と共に多くの製鉄炉を有し、「鉄のまほろば」と讃(たた)えられてきました。

 たたら製鉄では、ひとたび炉に火を入れると、三人一組の「番子」が三日三晩、交代で汗を流しつつ、ふいごを踏み続けます。「代わりばんこ」の言葉は、ここから生まれたといいます。

 磨き抜いた島根の匠(たくみ)たちの技と団結は、最先端の金属や電子部品の製造などにも流れ通い、世界に冠たるハイテク技術を誇ります。

 とともに互いに精進し、切磋(せっさ)琢磨(たくま)する気風は、多彩な人材を育んできました。

 相撲発祥の地にふさわしく、史上最強の雷電為右衞門(松江藩)など大力士が名勝負を残しています。

 「暁の超特急」吉岡隆徳さん(出雲市出身)が、1935(昭和10)年に出した100メートル走の世界記録も不滅です。

 「日本近代スポーツの父」岸清一さん(松江市出身)が礎を築いた55年前の東京五輪では、体操の竹本正男監督(浜田市出身)が団体優勝に導き、水泳のリレーも島根勢の活躍でメダルを獲得しました。

 来夏の東京五輪・パラリンピックも楽しみです。

 島根の父母(ちちはは)たちと私は、よく「鉄(くろがね)は炎(きたい)打てば剣(つるぎ)となる」という先哲の金言を語り合ってきました。

 鍛えの汗を惜しまぬ、この心を受け継いで、島根の青年たちは、ボランティア活動にも積極果敢に挑んでいます。新時代の成長産業たる農林業などでも、若き人材群が宝剣のごとく光彩を放っているのです。

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 また「命を活かす知恵の光」が島根にはあります。

 とりわけ、人間性豊かにして進取の気性に富む女性の活力が、いずこにもまして発揮されています。

 島根では、保育所の拡充など、いち早く女性が子育てをしながら働ける環境づくりに取り組まれてきました。今、「全国一働きやすく、女性が活躍する県」を目指し、職場、家庭、地域・社会という女性を取り巻く環境に、“きらめき指数”を設定して、改善を進めています。

 私と妻が、高校生の時からの成長を見守ってきた邑南町の女性は、地域を盛り上げるため、心やさしき「やまんば」をキーワードに「グルメ事業」を推進してきました。飲食店や役場、観光協会などと見事なチームワークで、「山間部の町おこし」の手本と仰がれているのです。

 女性教育の道を開いた上代タノ先生(雲南市出身)は、「自分から進んで自分の人生にチャレンジする人間」たれ、と呼び掛けました。

 勇気ある挑戦の中でこそ、一人一人の生命に具(そな)わる創造性が解き放たれていくのではないでしょうか。

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 島根には「世界を結ぶ友情の光」も満ちています。

 かつて日露戦争の折、江津市沖で投降したロシア船の200人以上の乗員が、手厚く介抱された歴史があります。この人道の精神を偲(しの)び、現在でもロシアの学生と地元の小学生が平和の集いを行っています。

 島根とインドの交流は、自治体の枠を超え、産学官が連携した取り組みのモデルケースとなっています。交流を促進する山陰インド協会と山陰中央新報社の尽力に深く敬意を表します。

 近年、ブラジル、中国、ベトナムなどからも、在日外国人が増加し、人情に篤(あつ)い島根の方々と麗しい友情を結んでいます。

 島根で演奏会を開いた、ブラジルの音楽家アマラウ・ビエイラ氏は語られました。

 「真実の友人がいれば、そこがふるさとである」

 日本のふるさと・島根は「世界のふるさと」としても愛されていくでしょう。

 真の豊かさとは、心の豊かさです。

 真の幸福とは、自他(じた)共(とも)に心豊かに生きることです。

 このことを教えてくれる希望の光は、我らの愛する島根にありと、私は声を大にして訴えたいのです。