国の名勝・天然記念物「鬼の舌震(したぶるい)」の一角の奥出雲町三成にある飲食店「舌震亭」で行楽客をもてなす「看板おばあちゃん」、山田文子さん(99)が、自動車やバイクの施錠を呼び掛ける推進大使に委嘱された。74年にわたり店頭に立っており、顔の広さと客を和ませる人柄に、雲南署が着目した。店頭で声掛けやチラシ配布をして車上狙いや車両盗難の被害防止に一役買う。(清山遼太)
山田さんは1947年に亡き夫と一緒に鬼の舌震に茶屋を構えた。45年に三成地区で発生した火災で、営んでいた菓子店を失い、途方に暮れていた時、鬼の舌震の渓流美にほれ込んだのがきっかけだ。
長男の孝之助さん(68)に経営を引き継いだ後も、食材の山菜採りや、山菜入りのそば、おにぎりの調理を担う。「人との出会い」を励みに、持ち前の明るさと笑顔で観光客を出迎えている。地域では以前から評判で、観光振興への長年の功労から、2015年には奥出雲町観光協会に表彰された。
行楽シーズンとなり、鍵の掛かっていない車両の盗難や車上狙いが増えるとみて、同署三成広域交番や地元住民でつくる「三成広域交番連絡協議会」が啓発事業を検討していた。山田さんが22年で100歳となるのにちなみ「鍵かけ100%推進大使」と銘打った。
2日に舌震亭で委嘱式があった。山田さんは「これからもお客さんとの会話を大切にし、鍵掛けを呼び掛けていく」と意気込んだ。
委嘱期間は9日から21年1月16日まで。三成広域交番の平田真一所長は「山田さんに協力していただくことで、インパクトのある効果が期待できる」と話した。