松江市が2日、市ガス局が担う公営ガス事業を民間に譲渡する方針を示した。利用件数の減少や、電気やガス小売りの全面自由化に伴う事業環境の変化を踏まえ、行政では今後の環境変化や多様な需要に対応できないと判断した。譲渡先は2025年に決定する。 (片山皓平)
市ガス局は旧市内を対象に23年3月末で、家庭や事業所など1万2145件に都市ガスを供給。人口減少やオール電化住宅の普及などガス以外の燃料との競合で、1999年3月末の1万6226件をピークに右肩下がりが続く。販売量も低下し、2005年度の1047万1千立方メートルから、22年度は785万立方メートルに落ち込んだ。
市ガス局は法令などでガス販売のみしか原則認められておらず、民間事業者が展開するガスと電気のセット販売や、水回りのトラブル対応といった生活支援サービスの提供ができない。50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に対しても課題があり、顧客維持や新規獲得が難しい状況と判断した。
市は24年に譲渡先を選定する有識者委員会を開き、25年に譲渡先を決定する。事業主体や料金設定などに関わる譲渡要件は、有識者委員会で検討する。今後、市議会に方針を説明し、9月定例市議会に関連の条例案と、準備費用を盛り込んだ補正予算案を提出する。ガス局職員の処遇については、本庁での受け入れなどを検討する。
上定昭仁市長は2日の定例記者会見で「今の形態での経営は、持続可能性という面で厳しい状況がある。市民が不安にならないように、安心できる事業者に譲渡していくことを考える」と述べた。
ガス事業の民営化を巡っては、市が行財政改革の一環で01年に方針を打ち出した。これを踏まえ、有識者委員会で複数回検討を進めたが、議論が止まっていた。市ガス局は一時70億円を超える負債があったが、今年3月末現在で20億3700万円になっている。