黄色いポストの回収作業にあたる松江市大庭地区の有志=松江市大庭町
黄色いポストの回収作業にあたる松江市大庭地区の有志=松江市大庭町

 青少年の健全な育成に悪影響を与える雑誌やDVDなどを回収する「黄色いポスト」「青ポスト」などと呼ばれる有害図書回収ポスト。インターネットの発達に伴う環境の変化などを受けて廃止する地域がある一方、住民の手で管理が継続されている地域もある。回収の現場に立ち会い、現状を探った。
  (報道部・小引久実)

 7月15日、松江市大庭地区、地域安全推進員会のメンバー7人が地区内にある黄色いポストの投入物回収に当たった。2カ所から雑誌16冊、DVD4枚を取り出し、手際よくビニール袋に入れた。後日近くの交番に持ち込み、市職員が回収・処分する流れで定期的に取り組んでいる。

 炎天下のなか作業に当たった前島修会長(67)は中身がほぼ有害図書であることに触れ「意味を理解した上で利用されている。目につかぬように捨ててもらえてありがたい」と安堵(あんど)した様子で汗を拭った。

 有害図書回収ポストは1960年代に全国的に始まったとされる。子どもの目に触れさせたくない雑誌などの追放が狙いで、非行防止や間違った性知識を広げない役割を持つ。行政や青少年育成連絡協議会が設置し、回収後は廃棄処分する。松江市では1991年に導入され、現在はバス停の横やスーパーなど人目につきやすい計24カ所に設置している。

 2022年度は松江市で3962点の雑誌やDVDなどが回収され、そのほかの地域では、出雲市(4カ所)で1074点、益田市(3カ所)で22年9月から23年6月にかけて582点が集められた。

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 近年は有害な情報がインターネットの世界に移行する傾向にあり、回収品は年々減少。松江市内では10年前と比べおよそ3分の1となった。こうした状況とポストの維持・管理を担う住民の高齢化などを背景に、一部でポスト廃止を選ぶ地域が出ている。

 ポストの管理を巡っては、出雲、益田両市は市職員らが、安来市(3カ所)の一部や松江市は住民ボランティアが担っている。

 益田市では、有害図書が不法投棄ごみとして捨てられなくなったことや、古くなったポストの新調に経費がかかることから、来年以降の廃止を決定した。

 松江市の東出雲地区では回収の労力と効果が釣り合わないといった声が住民から上がり、地区内にあった4基を昨年撤去した。回収を担う人の高齢化も判断材料の一つだという。

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 それでも、今なおポストの存在を重要視する声がある。松江市青少年育成連絡会の木村忍副会長(48)は「有害図書が販売されている以上、ポストは必要だ」とする。自身が子どものころ、道端に有害図書が落ちているのが当たり前だった記憶を踏まえ、「昔のような状況にしたくない」と活動を続ける。

 松江市西嫁島1丁目の長岡塗装は昨年、市内1地区のポストを無償で塗り替えた。古志野純子常務取締役(61)は、子どもたちの健全な成長を願う理念に共感したといい、取り組みを別の地区にも広げている。「きれいになればポストの目的や趣旨が分かりやすくなるはず」と話す。

 回収品が減っているとはいえ、島根県内で年間5千点余りと依然ニーズはある。社会状況の変化はあれど「子どもを守りたい」という変わらぬ思いを背負い、回収ポストは今日も街角にたたずんでいる。