飛田和緒さんが勧める保存食の活用術
飛田和緒さんが勧める保存食の活用術
せっちゃんの保存食を手にする飛田和緒さん。「特に感動したのはタケノコとモモ。食感が違うんです」と話す
せっちゃんの保存食を手にする飛田和緒さん。「特に感動したのはタケノコとモモ。食感が違うんです」と話す
飛田和緒さんが勧める保存食の活用術
せっちゃんの保存食を手にする飛田和緒さん。「特に感動したのはタケノコとモモ。食感が違うんです」と話す

 在宅時間が増え、漬物や梅干しといった昔ながらの保存食作りが注目されている。シニア世代にとってはなじみの作業もコロナ禍で新鮮に捉えられ、保存が利く半面、「食べ切れない」との悩みも。長年の経験で培われた知恵を受け継ぎ、自家製の保存食が「暮らしの大事な一部」になったと話す専門家らに、楽しみ方や活用法を聞いた。

 「味の加減を自分好みにアレンジできるし、作るプロセスが分かる安心感が大きい」と魅力を語るのは、料理研究家の飛田和緒さん。毎年、自宅で数十種の保存食を仕込み、レシピ本も出版している。初めて作るならば「好きな物、食べたい物からスタートするのが一番」と断言する。

 自家製に限らず、市販の漬物などが冷蔵庫に眠っているという人には「調味料と同じ感覚で、料理にプラスしてみて」とアドバイスする。

 しょうゆや塩、酢などで調味するところを漬物で代用すれば、マンネリ化しがちな一皿も変化する。ポイントは、普段の味付けに足すのではなく、漬物を入れてみて塩加減などを調節すること。「うどんやそうめんのつゆも、発酵食が加わると深みが出る。食べて気付かれない程度の隠し味にも、お薦めです」

 例えば、梅干しやたくあんを細かく刻み、スープや炒め物、あえ物などに加えてみる。つぶした豆腐にまぜれば、白あえ風に。山芋短冊なども、加える漬物の種類を変えれば、しょうゆやポン酢をかけるのとは違った多彩なアレンジができる。

 ショウガの甘酢漬けを豚肉と一緒に炒めた「しょうが焼き風」や、白菜漬けを加えた野菜炒めも、飛田さんのお気に入りメニュー。「梅干しや白菜漬けを、そのままスープや煮汁に入れてもおいしい。古漬けになっても、活用法はたくさんあります」

 常温で保存できる瓶詰めの方法を知り、飛田さんのレパートリーは広がった。教えてくれたのは、長野県のリンゴ農家の「せっちゃん」。旬の果物や野菜で作る多種多様な味にほれ込み、仕事仲間と長野に通い詰めた。

 農家の豊かな知恵を次の世代まで残そうと、「せっちゃんの保存食」(KADOKAWA)を出版。春先の山菜から冬の野沢菜まで、作り方と調理例を紹介した。

 「山や畑で採れるものを無駄にせず、長く食べられるように工夫したのが保存食。こんなに利用価値が高いものはない」とせっちゃん。自然災害やコロナ禍で食材の売り切れが相次いだ際、ありがたみを再認識した。自分の舌を頼りに、70代の今も試行錯誤の連続だと笑う。「仕込む作業は大儀かなと思いますが、食べて喜んでもらえると張り合いになる。時短もいいけれど、どんな味に仕上がるかを待つ時間も楽しいですよ」