山陰両県にはお盆を過ぎても熱中症警戒アラートが発令されている。「外出を控えてください」と呼び掛けられる中、夜明けから夕暮れまで沖磯で釣りをしていたら高熱で寝込む羽目になった。後に病院で「熱中症の疑いあり」と診断された失敗談を反面教師にして、厳しい残暑を安全に過ごしてほしい。
(隠岐支局・鎌田剛)
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釣り人の聖地といわれる隠岐だが、しけの多い厳冬期と並び、盛夏の時期も釣りはオフシーズンとなる。ただ、ヒラマサといった青物は今シーズンは不振といわれるが、日中が狙い目となる。8月20日に他の釣り人1人と渡船に乗り、隠岐の島町の沖磯に向かった。熱中症対策として塩分を含んだタブレットとペットボトル(500ml)10本を氷詰めのクーラーに入れた。万が一を考えて他の1人とお互いに見える範囲に立ち、携帯電話の電波がしっかり入る磯を選んだ。

夜明けから潮の動きがない時間が続き、山陰独特のタルカゴを投げてもまったく反応がない。朝マヅメの時間が過ぎても変化がなく、底カゴで下層を狙うもやはり反応はなし。フグやウマヅラハギ、ベラといった餌取りが付け餌を上手に取っていく。午前中は薄曇りで意外にも直射日光が当たる時間が少ない。しかし、単調な流れのため、余計に暑く感じる。飲料を多めに飲んで時合が来るのを待った。
午後1時半すぎ、カゴ釣りをやめてフカセに切り替え、ようやく潮が沖に向かって流れ出す。リリースサイズだが、グレが釣れ始める。このポイントはグレ40センチ以上、ヒラマサ80センチ前後など潮が良ければ大物が姿を見せる絶好のポイントだ。

25センチ、30センチと立て続けに尾長グレが釣れて一気に雰囲気が良くなる。期待が高まると暑さをも忘れ、喉も乾かない。だが、興奮状態は危ういと思い常に飲料は飲み続けながら、あれこれと仕掛けを変えて大物を狙い続けた。
それにしても日差しが強く、汗で蒸すのでTシャツを着ていられない。この日の最高気温は午後2時、32・7度(西郷)。上半身裸になってライフジャケットだけをまとうと、そよ風も少しは涼しく感じた。最後までそのままの姿で釣りを続けた。
5時に納竿。結局、後が続かなかったが、暑い中で昼の釣行を無事終えて妙な達成感に満たされる。
家に帰って釣り具を片付け、グレの下処理を終えて風呂に入った後、エアコンの効いた部屋で寝ようとしたら妙に足先が冷たい。すでに上半身、ライフジャケットの隙間になる部分は真っ赤に焼けて熱を発していてヒリヒリする。だが、足先だけが異様に冷たく、明らかに体温がおかしいことに気づく。体温計で測ると38度2分。熱帯夜で上半身、日焼けした部分は熱を発しているのに全体的には妙に寒いと感じ始めた。エアコンを消し、窓を開ける。熱帯夜のはずが窓から入る風も寒く、完全に体温調節が狂っていることに気づいた。


そのまま3時間ごとに寝たり起きたりを繰り返し、平熱に戻ったのは翌日夜で、かなり体力は消耗していた。日焼け部分の痛みははまったく治らず、釣行から48時間が経過したこの原稿の執筆時も、針のむしろにいるようで特に服の脱着や横臥する際に強い痛みに襲われる。

かかりつけ医は「外の熱が体の中にこもっていたので発熱した可能性がある。熱中症でしょう」と指摘した。これまで毎年、同じような格好で真夏の日中に釣りをしてきたが、体調を崩したのは初めてだ。それほど今年の夏は激しい紫外線が降り注いでいるよう。当たり前だが、屋外に出る際は肌の露出を避けるよう心がけたい。また、しばらく釣りは夕方から朝までの夜釣りを選択すべきだ。