協同労働の可能性について語る古村伸宏理事長=松江市東津田町、いきいきプラザ島根
協同労働の可能性について語る古村伸宏理事長=松江市東津田町、いきいきプラザ島根

 働く人同士が出資し、給料や労働時間などの方針も話し合いで決める「協同労働」という新しい働き方を目指す動きが島根県内で出ている。経営者の指示で社員が働く「労使」関係がある株式会社と違い、労働者が経営にも責任を持つのが特徴。放課後児童クラブの運営など、地域課題を解決しながら、雇用も生む形として注目される。    (高見維吹)

 

 労働者による出資などのルールを定めた「労働者協同組合法」が、昨年12月に成立した。2年以内に施行される予定で、松江市内では、4月下旬に関心を持つ人たちを対象にした学習会があった。

 学習会の講師を務め、協同労働に詳しい日本労働者協同組合連合会の古村伸宏理事長(57)は、法制定後に全国各地から問い合わせがあり、関心が高まっているとした上で「働きたい人を守っていく理念が原点だ。さらに、働きがいのある仕事を自らつくり出す機会がある」と特徴を話す。

 新法に基づく「労働者協同組合」の設立は3人から可能だ。行政の認証が必要なNPO法人と違い、届け出だけで発足できる利点もある。県内で設立準備を進める、障害者らの就労支援事業所「あんびす」(浜田市田町)の大石和之さん(63)は「働く人が仲間との調和を保ち、自分の主体的意見を伝えて事業展開に生かせるのが利点だ」と話す。

 どのような業種が「協同労働」に向いているかは今後の動きによるが、放課後児童クラブの運営など、子育てサービスに関する事業などでの活用、コロナ禍で失業した人の受け皿としても想定されており、古村理事長は「地域づくりの新たな選択肢になる」と期待する。