学校では出雲弁NG!?-。「だんだん(ありがとう)」「ばんじまして(こんばんは)」など、世代を越えて地域住民に親しまれている出雲弁。現在は後世にどう残していくかが課題になっているが、かつては出雲弁を標準語に直す「撲滅運動」とも呼ぶべき矯正教育が行われていた。松江市内の企画展で資料を見つけ、なぜこのようなことが行われたのか、興味があり調べてみた。(Sデジ編集部・林李奈)
松江の教育で使用された教科書
企画展は、松江市殿町の松江歴史館で開かれている「みんなの小学校 150年のあゆみ」。150年前の1873(明治6)年の学制発布と同時に始まった小学校の歴史を、写真や資料で伝えている。その中で、1888(明治17)年に出版された「出雲言葉のかきよせ」という本を見つけた。この本は1884(明治13)年に、教師が自主的に組織した島根県私立教育会が発行し尋常小学校などで使われたと考えられる教本。出雲弁を矯正することを目的とし、内容は出雲弁の言葉を「標準語」にした内容が書かれ、副読本として使われていた。

雲州言葉のかきよせの内容
中身は以下のようだ。訛言の部、方言の部、甲乙の対話の三つの単元に分けられている。本文では、我らが出雲弁を衝撃の言葉で表現していた。「本書には雲州言葉と普通の言葉を比べて改良する目的があり、雲州言葉(出雲弁)は下等社会で使われる言葉と知るべし」。なんとも失礼な話だ。「下等社会」とはまず何かを問いたいところだが、とにかく出雲弁を使うことを「恥」と思わせたい意図を強く感じた。
訛言の部では発音の矯正がテーマだ。出雲地方では「う」が「た」となまり、ウシのことを「たし」、ウサギのことを「たさぎ」と呼び、「つ」が「ち」になまり出雲(いづも)を「いぢも」、松江(まつえ)を「まちえ」と発音してしまうと例を挙げて発音の特徴を説明。こういった発音の「誤り」を学び、「努めて普通の言葉を使うように」と呼びかけている。
方言の部では、言葉(単語)がテーマで、出雲弁の言葉とそれに該当する標準語が記されていた。「転ぶ」の項では雲州では一般に「まくれる」と言い、...